2013 年 41 巻 2 号 p. 94-102
筋萎縮性側索硬化症 (ALS) の的確な診断のためには, 筋電図および神経伝導検査は必要不可欠である。2008年に, 電気生理学的所見の重要性をより強調した新たな診断基準であるAwaji基準が発表され, 臨床の場でも利用されている。Awaji基準では, 針筋電図の異常は臨床上の下位運動ニューロン徴候と同等であり, 線維束自発電位 (fasciculation potential) は活動性脱神経電位と見なす, などの改訂がなされており, 診断率が向上することが期待されている。一方神経伝導検査は, ALSに特徴的なsplit handの確認や, 脱髄性ニューロパチーなどの治療可能な疾患の鑑別に有用である。また横隔神経伝導検査による複合筋電位の振幅は, 呼吸機能と相関する指標であると報告されている。上位運動ニューロン機能の評価には経頭蓋的磁気刺激法が用いられるが, 感度・特異度とも十分ではなく汎用には至っていない。