2014 年 42 巻 1 号 p. 21-30
刺激の波及 (current spread) の現象は神経伝導検査 (NCS) における重要なpitfallである。これらに周知していないと, ルーチン検査でも間違った結果を得る場合があり, 特に運動神経伝導検査 (MCS) では伝導ブロックについての誤診につながりやすい。正中–尺骨神経間のspreadはErb点では必発, 手掌, 腋窩・上腕部でも高頻度に起こる。手首刺激でも不用意に強い刺激でspreadが起こり得る。正中神経MCSの近位刺激ではcollision法が必須である。また手根管症候群での手掌刺激MCSの解釈には注意を要する。橈骨神経MCSでも腋窩, Erb点で正中神経にspreadするので対処が必要である。感覚神経伝導検査 (SCS) でもspreadは問題となり得る。母指比較法, 環指比較法でのフタコブラクダ徴候 (Bactrian sign), 示指刺激順行法正中神経SCSでの橈骨神経へのspread, 逆行法尺骨神経SCS手首刺激の背側皮枝へのspread, 外側前腕皮神経SCSでの橈骨神経へのspreadなどについて解説する。