臨床脳波の記録は, アーチファクトを最小限に抑えて判読のしやすい綺麗な脳波を記録することが, われわれ脳波記録者に課せられた業務の1つである。特に脳死判定の際にはアーチファクトを取り除くことが極めて重要な作業となり, 臨床検査技師として腕のみせ所である。確かに, 一般書籍によると, アーチファクトはその原因をつきとめて, 可能な限り除去することと述べられている。しかし, 時としてアーチファクトそのものが, 臨床脳波判読の際に大切な情報をもたらすこともあり, アーチファクトを注意深く観察しなくてはならない場合も存在する。臨床脳波の記録はアーチファクトとの闘いであり, 判読の敵となることが大半であるが, ときには結果を紐解く味方にもなりうるアーチファクトも存在する。一般的なアーチファクトの鑑別点や対処法, 臨床的意義のあるアーチファクトの鑑別を一部症例提示しながら述べる。