臨床神経生理学
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尺骨神経管症候群
今井 富裕
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2015 年 43 巻 4 号 p. 183-188

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抄録

2年ほどの経過で徐々に右手筋萎縮と筋力低下が進行してきた30代男性例。右利きで仕事上よくOA機器のマウスを使っている。右背側骨間筋に筋萎縮を認めたが, 小指球には明らかな筋萎縮は認めなかった。深部腱反射には特記すべき異常はなく, 尺骨神経領域を含め感覚障害は認めなかった。右尺骨運動神経伝導検査では, 被検筋を小指外転筋 (ADM) にすると伝導遅延は認めなかったが, 被検筋を第一背側骨間筋 (FDI) にすると手根部より遠位での著明な伝導障害を認めた。右尺骨感覚神経伝導検査には異常を認めなかった。Zone・で手掌深枝が障害された尺骨神経管症候群 (UTS) と診断し, 整形外科手術を施行したところ豆状有鉤裂孔近位部での右尺骨神経の絞扼が明らかとなった。末梢神経伝導検査はUTSの障害部位を同定するために非常に有用な方法であり, 絞扼部位の除圧を行う術前検査として必須である。

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© 2015 一般社団法人 日本臨床神経生理学会
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