日本人の総腓骨神経伝導検査では, 健常人でも導出困難例が存在すると言われ, いわゆるルーチン検査の被検神経として選択していない施設も多い。この導出困難例については正座習慣による潜在性腓骨神経障害が存在するためと推測されてきたが, 検証はされていない。近年, 生活習慣は変化していることから, 健常成人の下肢神経伝導検査所見の経年変化を検討した。総腓骨神経, 脛骨神経複合運動活動電位 (CMAP) 振幅は, 1995年以降では有意に増大していた。これらの変化には, 体格や検査時の栄養状態による影響は低く, 運動習慣, 椅子生活への変化などの生活スタイルの変化が影響している可能性を考えた。総腓骨神経の伝導検査は, 1995年以降ではCMAP振幅は有意に増大し導出も容易となっており, 異常の判定も容易になっていると考えた。今後, 総腓骨神経がルーチン検査の被検神経として広く使われることが望ましい。