2021 年 49 巻 4 号 p. 184-191
系列的規則に沿って変化する物体 (例えば, 飛んでくるボール) を観察しているとき, 私たちの視覚系はその規則を利用して, その物体の未来の状態を自動的に予測している。このような物体を観察している際の事象関連電位 (event-related potential: ERP) を計測すると, (少なくとも比較的単純な規則に沿って変化する物体の場合) 予測された物体の状態と実際の物体の状態が一致したときには外因性のERP (P2) の減衰が, 一致しなかったときには内因性のERP (visual mismatch negativity: VMMN) の出現が観察される。本稿では, この二つのERP効果に関する基礎的な知見, およびこの二つのERP効果が知覚の変容と密接に関係していることを示す近年の知見を紹介する。さらに, 自動的予測はそもそも何のために行われ, 私たちの日々の活動においてどんな役割を担っているのかについて考察する。