2023 年 51 巻 2 号 p. 57-61
良性成人型家族性ミオクローヌスてんかん (BAFME) は, 1991年にYasudaによって疾患概念を提唱された稀な常染色体顕性遺伝 (優性遺伝) 疾患である。我々は, Yasudaの大家系例を用いて候補領域を8q23–24.1に絞り込み, 2011年にその領域に存在する遺伝子の全エクソンに対して配列解析を行ったが, 変異の同定には至らなかった。その後, Ishiuraらによって, 同領域に存在するSAMD12遺伝子のイントロン内に, 異常伸長したTTTCA/TTTTAリピートが病因変異として同定された。それを受け, 我々は日本人BAFME 12家系の遺伝子変異解析を行ったところ, 解析した家系症例全てにおいて同様の変異が確認され, 臨床的にも遺伝学的にも表現促進現象を認めた。イントロンの異常伸長したリピートがRNAに転写され核内にRNA fociを生じ細胞毒性を来す病態が示唆されており, てんかんの新しい分子機序として更なる研究の発展が期待される。