臨床神経生理学
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51 巻, 2 号
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特集「BAFME:臨床神経生理学と分子遺伝学のupdate」
  • 池田 昭夫, 重藤 寛史
    2023 年 51 巻 2 号 p. 41
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル フリー
  • 豊田 知子, 足立 弘明
    2023 年 51 巻 2 号 p. 42-50
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル フリー

    良性成人型家族性ミオクローヌスてんかん (BAFME) は振戦様ミオクローヌス及び希発全般強直間代発作を特徴とする常染色体優性遺伝性疾患である。我々はSAMD12遺伝子に変異を認めたBAFME1型16例の臨床所見と脳波所見の特徴について解析した。てんかん発作は必ずしも「稀発」ではなく抗てんかん発作薬多剤併用を必要とした例もある。てんかん発作型は全般強直間代発作以外にミオクロニー欠神発作や焦点起始両側強直間代発作も認めた。ミオクローヌスは多くの症例でてんかんに先行し, 重症度は軽度から日常生活に支障をきたすものまで幅があった。その他光過敏症状や精神症状を伴うことが多かった。脳波検査で認めたてんかん放電の所見は①全般性 (多) 棘徐波複合, ②全般性棘波・鋭波, ③焦点性棘波・鋭波で, 全般性と焦点性の混在を認めることもあった。また光突発反応を高率に伴った。これらのBAFMEの脳波所見の特徴は症候性全般てんかんの脳波所見と共通であることに気づかされた。

  • 戸島 麻耶, 小林 勝哉, 人見 健文, 宇佐美 清英, 音成 秀一郎, 松橋 眞生, 池田 昭夫
    2023 年 51 巻 2 号 p. 51-56
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル フリー

    良性成人型家族性ミオクローヌスてんかん (BAFME) は, 律動性の皮質振戦を呈し, 皮質性ミオクローヌス (CM) に属する。体性感覚誘発電位のP25, N35振幅の増大 (巨大SEP) などからミオクローヌス・振戦の皮質起源が示唆される。脳波では背景活動の振幅が増大し尖った成分を含むspiky alphaを持つことが経験上知られる。BAFMEを他のCMと鑑別する臨床神経生理学的診断バイオマーカーはこれまでなく, 検討した。BAFME 16例, 他のCM 33例を比較し, BAFME はP25に重畳する高周波律動 (P25-HFO) により高い感度 (100%) と特異度 (87.9%) で診断された。P25-HFOはBAFMEの有用な新規の診断バイオマーカー候補である。脳波での検討では, BAFMEは他のてんかん性CMに比べて後方領域の速波活動が有意に増大し, spiky alphaの形成への関与が考えられた。

  • 寺﨑 茜, 浦田 結嘉, 中村 雅之
    2023 年 51 巻 2 号 p. 57-61
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル フリー

    良性成人型家族性ミオクローヌスてんかん (BAFME) は, 1991年にYasudaによって疾患概念を提唱された稀な常染色体顕性遺伝 (優性遺伝) 疾患である。我々は, Yasudaの大家系例を用いて候補領域を8q23–24.1に絞り込み, 2011年にその領域に存在する遺伝子の全エクソンに対して配列解析を行ったが, 変異の同定には至らなかった。その後, Ishiuraらによって, 同領域に存在するSAMD12遺伝子のイントロン内に, 異常伸長したTTTCA/TTTTAリピートが病因変異として同定された。それを受け, 我々は日本人BAFME 12家系の遺伝子変異解析を行ったところ, 解析した家系症例全てにおいて同様の変異が確認され, 臨床的にも遺伝学的にも表現促進現象を認めた。イントロンの異常伸長したリピートがRNAに転写され核内にRNA fociを生じ細胞毒性を来す病態が示唆されており, てんかんの新しい分子機序として更なる研究の発展が期待される。

  • 音成 秀一郎, 人見 健文, 戸島 麻耶, 小林 勝哉, 石浦 浩之, 池田 昭夫
    2023 年 51 巻 2 号 p. 62-66
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル フリー

    近年の分子遺伝学的研究により, SAMD12のイントロンのTTTCAならびにTTTTAからなる5塩基リピート伸長変異が良性成人型家族性ミオクローヌスてんかん (BAFME) を引き起こすことが明らかになり, リピート数とてんかん発作の初発年齢に負の相関があることが示された (Ishiura et al, Nature Genetics 2018) 。しかし, 非翻訳領域のリピート数が, 発症後の慢性期における長期的な症状進行にどのように影響を与えているかは不明である。BAFMEでは中高年以降において皮質興奮性が徐々に悪化するため, リピート数が長期的に神経予後に影響を与えているのか, あるいは他の関連因子が存在するのかは, 変性疾患の進行の病態機構を解明する上で興味深い。そこで, BAFME1型と診断された18名の患者を対象に, リピート伸長変異のリピート数と表現型 (皮質振戦・発作の発症年齢, SEP解析による皮質興奮性, 罹患期間) の相関を評価した。その結果, 既報告と同様に, 発症年齢はてんかん発作と負の相関があり, 加えて皮質振戦の発症年齢もリピート数と負の相関があることが示された。さらに偏相関分析によって皮質興奮性はSEP検査時の年齢 (加齢) には有意な相関があることが示され, 大脳皮質の一次感覚運動野における興奮性の経時的な増大は, 疾患進行における「加齢」の影響を受けていると考えられ, 特に中高年以降でのBAFME患者では加齢そのものが症状進行因子として異なる役割を担っている可能性がある。

特集「発達障害と事象関連電位」
  • 稲垣 真澄, 板垣 俊太郞
    2023 年 51 巻 2 号 p. 67
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル フリー
  • 池田 一成
    2023 年 51 巻 2 号 p. 68-72
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル フリー

    自閉スペクトラム症 (ASD) の多くに感覚過敏や鈍麻といった感覚処理障害 (SPD) が併存する。SPDを受動 (低登録・感覚過敏) と能動 (感覚探求・感覚回避) に分けた場合, 受動傾向が高機能ASDのSPDをよく表現し, その要因に求心性伝達障害が想定される。SPDに寄与する求心路は並行的伝導路 (末梢から一次感覚野まで) と離散的伝導路 (一次感覚野以降) に区別できる。聴覚経路においては, 聴性脳幹反応に現れる並行的伝導路の障害が聴覚野における補償的過活動を惹起すると考えられる。聴覚ミスマッチ磁場・陰性電位の知見は, 離散的伝導路における左半球の伝達障害が聴覚過敏に寄与することを示唆する。Highly sensitive personの理論では環境への敏感さが大脳右半球の活性に基づくとする。類推すると, ASDで生じるSPDには並行的伝導路の過活動に加え, 半球間で非対称な離散的伝導路の活動が寄与すると考えられる。

  • 日高 茂暢
    2023 年 51 巻 2 号 p. 73-77
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル フリー

    自閉スペクトラム症 (ASD) の社会性障害について, 顔認知を中心に研究されてきた。近年のメタ分析ではASDにおいて顔特異的N170の潜時が遅延することが一貫して示されており, アメリカやEU圏でバイオマーカー候補として注目を集めている。N170潜時はASDの診断に有用な可能性がある一方, SSTや応用行動分析による心理療法による介入への応答性は一貫していない。N170の加算回数によるSN比の課題から, 定常視覚誘発電位をバイオマーカー候補として提唱する研究もある。また表情変化観察時に生じるN170増強や社会的文脈から逸脱する表情に対し惹起するN400といったASDの社会性障害に感度のあるERP成分も報告されている。それぞれのERP成分がバイオマーカーとしてどのような性質をもっているか, 刺激や課題, アウトカム等を精査する必要がある。

  • 太田 豊作
    2023 年 51 巻 2 号 p. 78-82
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル フリー

    注意欠如・多動症は, 不注意, 多動性, 衝動性を中心症状とする神経発達症である。注意欠如・多動症の生物学的研究の中でも精神生理学的研究は重要な位置を占めるようになっている。我々の研究グループは, これまで事象関連電位の成分のP300とミスマッチ陰性電位に注目して研究を行い, 臨床にどのように応用していくかを検討してきた。現在, 小児期において注意欠如・多動症治療薬は4薬剤が使用可能となり, 安全に負担なく薬物治療を行うためには使用薬剤の選択基準の確立が求められており, 我々はP300による治療効果の反応予測の可能性を検討している。徐放性メチルフェニデートおよびアトモキセチンに対する反応予測の研究を提示し, P300を用いた注意欠如・多動症治療薬への反応予測の可能性について考察した。

  • 板垣 俊太郎, 矢部 博興
    2023 年 51 巻 2 号 p. 83-86
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル フリー

    自閉症スペクトラム障害 (Autism Spectrum Disorder: ASD) のP3bはメタアナリシスで振幅の減衰が示され, 意思決定処理状態における認知およびワーキングメモリの欠陥が示唆された。Mismatch Negativity (MMN) のメタアナリシスでは, 言語課題MMNでは振幅の減少と, 潜時の延長が報告されており, 乏しい社会機能や中核的な言語性の障害との関連が指摘された。一方で非言語課題のMMN振幅の減少は, 前注意/時間的聴覚処理の欠陥を示唆した。注意欠如多動性障害 (Attention Deficit Hyperactivity Disorder: ADHD) のP300のメタアナリシスでは, Cue P300振幅の減衰, Go P300の潜時延長, NoGo-P300 振幅の減衰, NoGo-P300潜時の延長が認められた。MMNの小児期ADHDのメタアナリシスで, 定型発達児に比べてMMN振幅が減少することが明らかになったが分析に選ばれた論文の課題や測定方法の条件が統一されていない問題点がある。成人期ADHDにおいてはMMNの振幅の減衰や潜時延長を示さない報告もあり小児期と成人期で異なる認知特性が示される可能性もある。

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