近年の分子遺伝学的研究により, SAMD12のイントロンのTTTCAならびにTTTTAからなる5塩基リピート伸長変異が良性成人型家族性ミオクローヌスてんかん (BAFME) を引き起こすことが明らかになり, リピート数とてんかん発作の初発年齢に負の相関があることが示された (Ishiura et al, Nature Genetics 2018) 。しかし, 非翻訳領域のリピート数が, 発症後の慢性期における長期的な症状進行にどのように影響を与えているかは不明である。BAFMEでは中高年以降において皮質興奮性が徐々に悪化するため, リピート数が長期的に神経予後に影響を与えているのか, あるいは他の関連因子が存在するのかは, 変性疾患の進行の病態機構を解明する上で興味深い。そこで, BAFME1型と診断された18名の患者を対象に, リピート伸長変異のリピート数と表現型 (皮質振戦・発作の発症年齢, SEP解析による皮質興奮性, 罹患期間) の相関を評価した。その結果, 既報告と同様に, 発症年齢はてんかん発作と負の相関があり, 加えて皮質振戦の発症年齢もリピート数と負の相関があることが示された。さらに偏相関分析によって皮質興奮性はSEP検査時の年齢 (加齢) には有意な相関があることが示され, 大脳皮質の一次感覚運動野における興奮性の経時的な増大は, 疾患進行における「加齢」の影響を受けていると考えられ, 特に中高年以降でのBAFME患者では加齢そのものが症状進行因子として異なる役割を担っている可能性がある。
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