日本臨床プロテオーム研究会要旨集
第3回日本臨床プロテオーム研究会
セッションID: S-5
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シンポジウム
アガロース2-DEを用いたヒト腎細胞癌プロテオミクスにおけるサンプル調製法改良の重要性
*大石 正道二井 祥仁大草 洋藤田 哲夫岩村 正嗣馬場 志郎小寺 義男前田 忠計
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抄録
 疾患プロテオーム解析においては、ヒトの疾患臓器に含まれる全タンパク質が解析対象となるが、どの手法を用いた場合でも、高分子量タンパク質、微量タンパク質、膜タンパク質は解析が難しい。この問題を解決するために、さまざまなサンプル調製法や解析法が工夫されてきたが、すべての臓器に対応した共通の実験プロトコールは存在しない。我々の研究グループは、一次元目にアガロースゲルを用いる二次元電気泳動法(アガロース2-DE)で、主に分子量10万以上の高分子量タンパク質をターゲットに解析を行ってきた。ところが、ヒト腎細胞癌の手術検体を研究材料に、ラット腎臓と同一の実験プロトコールを試したところ、抽出できたタンパク質の種類とタンパク量はともに少なく、タンパク質成分を十分に可溶化できていなかった。そこで、本研究では、ヒト腎臓組織の破砕方法とタンパク質成分の抽出条件について以下の4種類の方法(1)~(4)を比較し、ヒト腎臓組織のプロテオーム解析に最適な条件を決定した。その結果、テフロン-ガラスホモジナイザー中でホモジナイズ後に、(1)超音波破砕を行う方法、または(2)Glass Beads を加えてVortexで攪拌する方法は、(3)テフロン-ガラスホモジナイザーでホモジナイズしただけの場合よりも、大幅にスポット数とタンパク量を増やすことができた。一方、(4)市販のホールクルード抽出キット(C-PEK)を用いたタンパク質抽出法は、(2)の方法に比べて、タンパク質成分のスポットが少ないだけでなく、高分子量(60-300kDa)で塩基性(pH7-9)のスポットがほとんど検出されなかった。以上の結果から、アガロース2-DEを基盤としたプロテオミクスでは、できるだけ多くの種類の高分子量タンパク質を検出し、個々のスポットに関してはLC-MS/MSによる同定に必要なタンパク量を確保できるかが重要であるため、解析対象の臓器に適したサンプル調製法の検討が新規腫瘍マーカー探索には不可欠である。
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© 2007 日本臨床プロテオーム研究会
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