子育て研究
Online ISSN : 2189-7581
Print ISSN : 2189-0870
プロサッカークラブにおける指導の実際から親役割を考える
梅崎 高行名取 洋典
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 4 巻 p. 8-18

詳細
抄録

本研究では,プロサッカークラブの指導の実際から,脱錯覚に向けた親子関係の見直しについて言及した。脱錯覚は子育ての課題である。親の過剰なかかわりが目されるスポーツ文脈において,親は適切に脱錯覚を成し得ているのか。プロクラブの実践は一般の保育・教育とは異なる面も持つが,大人の「させる」かかわりにみられる問題をより顕著に示しているとも考えられる。スポーツに対する子どもと親の認識にずれも指摘されるなか,子どもが直面する現実世界から議論を始めることは,ずれの解消はもとよりつぎの2 点からも有効に思われる。すなわち(1)親子を子育て・子育ちの主体と定位し,脱錯覚をスポーツ文脈における親役割にも敷衍すること,(2)親と指導者を子どもの発達を支えるパートナーと定位し,指導実践を批判的に検討することである。指導実践における指導者の発話分析の結果,プロサッカークラブでは選手の能力評価に応じた指導が明確化されており,プロサッカー選手を目指しながら子どもたちは,個々の評価に伴う葛藤を抱えるものと想像された。これを踏まえどの親も共通して脱錯覚を子育ての第一課題としながら,子どもが求めてきた場合に個別的で情緒的な対応が必要であることを確認した。併せて本研究では,成体を想定した従来の年齢・段階的な発達観の問題も指摘された。

著者関連情報
© 2014 日本子育て学会
前の記事 次の記事
feedback
Top