子育て研究
Online ISSN : 2189-7581
Print ISSN : 2189-0870
4 巻
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 川上 清文
    2014 年 4 巻 p. 3-7
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー
    本論文の目的は、子どもたちの保護者・教師・多くの分野の研究者に村井実の“ よさ理論” を紹介することである。村井による教育の定義は「子どもは“ よく” 生きようとしている。大人は、子どもたちのその働きを助けようとする。大人のこの活動を“ 教育” と呼ぶ」というものである。村井理論の重要な点は「子どもは“ よく” 生きようとしている。しかし、私たちは“ よさ” とは何か決めることができない。これが教育のパラドックスである」ということである。この論文では、“ よさ” に関するいくつかの例を呈示する。
  • 梅崎 高行, 名取 洋典
    2014 年 4 巻 p. 8-18
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー
    本研究では,プロサッカークラブの指導の実際から,脱錯覚に向けた親子関係の見直しについて言及した。脱錯覚は子育ての課題である。親の過剰なかかわりが目されるスポーツ文脈において,親は適切に脱錯覚を成し得ているのか。プロクラブの実践は一般の保育・教育とは異なる面も持つが,大人の「させる」かかわりにみられる問題をより顕著に示しているとも考えられる。スポーツに対する子どもと親の認識にずれも指摘されるなか,子どもが直面する現実世界から議論を始めることは,ずれの解消はもとよりつぎの2 点からも有効に思われる。すなわち(1)親子を子育て・子育ちの主体と定位し,脱錯覚をスポーツ文脈における親役割にも敷衍すること,(2)親と指導者を子どもの発達を支えるパートナーと定位し,指導実践を批判的に検討することである。指導実践における指導者の発話分析の結果,プロサッカークラブでは選手の能力評価に応じた指導が明確化されており,プロサッカー選手を目指しながら子どもたちは,個々の評価に伴う葛藤を抱えるものと想像された。これを踏まえどの親も共通して脱錯覚を子育ての第一課題としながら,子どもが求めてきた場合に個別的で情緒的な対応が必要であることを確認した。併せて本研究では,成体を想定した従来の年齢・段階的な発達観の問題も指摘された。
  • —幼児期に人工内耳埋め込み手術を施行した聴覚障害児の事例から考える—
    荒木 友希子
    2014 年 4 巻 p. 20-31
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー
    本研究では,幼児期に人工内耳埋め込み手術を受け,小学校通常学級に在籍するひとりの聴覚障害児を対象に,小学4 年,および,中学進学を控えた小学6 年の2 回にわたってインタビュー調査を実施した。質的データ分析方法である大谷(2008, 2011) のSCAT に従って分析した結果,小学4年時のインタビューでは人工内耳を否定的に捉えていたが,2年後のインタビューでは人工内耳に対してニュートラルな感覚を持つようになり,以前の否定的感情が変化していたことが明らかとなった。また,聴覚障害者としてのアイデンティティを形成していたこと,および,人工内耳を活用してインテグレーション教育を継続することよりも,手話でコミュニケーションができる特別支援学校での教育を自らの意思に基づいて選択したことが報告された。その背景には,調査対象者が幼児期からこれまで,家庭での豊かなコミュニケーション環境において養育されたこと,および,ろう者の友人と手話でのコミュニケーションによる深い交流を持つ機会を日常的に持っていたことが,調査対象者の健全な自己肯定感を育む基盤となっていると考えられる。また,調 査対象者の母親の存在が調査対象者の障害受容やアイデンティティの形成に大きく影響を与えていたことが示唆された。
  • -母親の注意を喚起する「視線」-
    宮津 寿美香
    2014 年 4 巻 p. 32-41
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー
    本研究は、母親の注意を喚起する視線を「目さし」と定義し、乳児期初期から前言語期を縦断的に観察することで、「目さし」の発達的意味を探ることを目的とした。1 組の乳児( 女児) とその母親の相互作用場面を対象とし、生後7 か月~ 2 歳3 か月まで、家庭での観察による縦断的研究をした( 観察合計36 回)。記録から、乳児には言語に関連する4つの言動が抽出され「( 目さし」( 母親の注意を喚起する視線 )、「指さし」、「一語文」、「二語文」)、それに対する母親の反応は大きく3 つにわけられた(「見る」、「指さし」、「声かけ」)。その結果、「目さし」で特に多かったものは「声かけ」であり、その内容に対象の名詞が入っているものの割合を算出したところ、「指さし」と「目さし」はほぼ同一であり( 目さし60.0%、指さし59.5%)、「目さし」と「指さし」は、同様の機能がある可能性が示唆された。また、乳児の視線が母親の声かけを引き起こすまでの平均時間を測定したところ、発達と共に、母親の乳児の視線への反応時間が長くなり、「目さし」が起こりにくくなることがわかった。乳児が、視線によるコミュニケーションから言語を用いたコミュニケーションへと移行することで、母親も乳児の状況に見合った関わり方をしていることが推測される。
  • ―保育所の支援からの自立プロセス―
    照井 裕子, 岡本 依子, 菅野 幸恵
    2014 年 4 巻 p. 42-52
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー
    本研究では,親たちが保育所からの支援を受けつつ主体的活動を行うようになったZ 音楽祭という活動に着目し,母親たちへのグループ・インタビューから活動がいかに母親たちによる主体的なものになったのか,また活動に対する親たちの意味づけ,保育所からの支援に対する意味づけを検討した。当初保育所主導で音楽祭が実施されたが,第3 回音楽祭には活動の基盤を安定させ支援の一方的な受け手から脱却し,親たちの主体的な活動となっていた。活動への意味づけでは,特に第2 回において母親たちが主催者として位置づけられたことがもたらした母親たちの活動への向き合い方の変化や活動におけるインパクトを大きく捉えていること,また活動を,自分たちがやりたいことを楽しみ子どもを活動に巻き込む場として意味づけ,支援の受け手から脱却するという意味での主体性を発揮しつつ,個人としての主体性を発揮する場をも創造した活動と捉えられた。保育所からの支援への意味づけでは,「安心してはじけられる」環境にあったことを既存の「サービス」とは異なると区別し評価していた。さらに,物理的支援に関しては回を経るごとに減少したものの,必要に応じて頼れる状況だったことを高く評価しており,保育所による緩やかなお膳立てとも言える支援が母親たちにとって大きな意味を持っていたと考えられた。
  • :授乳についての語りにみられる母乳プレッシャーの受け入れ/ 拒否
    岡本 依子, 菅野 幸恵, 川野 健治, 高崎 文子
    2014 年 4 巻 p. 53-64
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー
    本研究では、5 名の母親に授乳についての日誌を依頼し、母乳か人工乳かを含めた授乳のやり方全般についての授乳スタイルが、どのように定着していくかを検討した。分析1では、日誌から、授乳評価についての語りと人工乳の増減との関係を検討した。その結果、多くの母親は、生後1ヶ月半から2ヶ月以内に、授乳に関して特定の語り口に安定していくことが見出された。分析2では、語り口が安定しなかった母親の日誌について、授乳スタイルの変化の背景として考えられる人工乳への“ わりきり” について、質的に検討した。このように授乳スタイルが安定しない背景には、母乳の出方についての“ わりきれなさ”、第三者の意見の取り込みと反発、および、乳量評価の根拠の受け入れ拒否などがあった。最後に、授乳からみる親への移行について論じた。
  • —横断的データと縦断的データを用いた検討—
    久保田 桂子
    2014 年 4 巻 p. 65-74
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー
    本研究は,「行動分析」を中心に青年期の娘と母親の関係の発達差や変化の一部を横断的データと縦断的データから捉えることを目的とした。研究1 では,横断的データを用い,母娘関係の発達差を検討した。そして,研究2 では,縦断的データを用いることで,個人内の変化に注目した。研究1 の結果,中学生は母親の意見を無視した行動をとったり,母親を拒絶する行動が多くみられた。その一方,大学生の娘は母親が作業しやすくなるよう援助的な行動を多く示した。また,中学生の母親は援助側にまわっていたが,大学生の母親は娘と対等に課題を進めていた。さらに,中学生の娘と母親は,母親が娘を援助したり,指示を出してコントロールしながらも娘を中心に作業が進められ,大学生の娘と母親は,母親と娘が話し合いながら作業を進める対等な関係であることが示唆された。また,研究2 では,青年期前期から青年期中期に変化を示す娘とは異なり,母親は娘が青年期中期以降に変化することが示された。研究2 における違いは,青年期の娘と母親の関係において,母親と娘の変化のタイミングにズレが生じているとも捉えることができる。
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