映画研究
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母性幻想とレズビアン感性
『挽歌』と『女であること』における久我美子
徐 玉
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ジャーナル オープンアクセス

2021 年 16 巻 p. 4-26

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抄録

本稿は、久我美子が主演した文芸映画『挽歌』と『女であること』における疑似母娘関係に着目し、原作小説とも比較しながら、〈母性〉を介した女同士の親密な関係の映画的表現の特色を考察した。また、久我美子のスター・ペルソナとこれらの作品の関係を探った。『挽歌』については、怜子という新しい女性像、および怜子のヴォイス・オーヴァーをはじめとする女たちの「声」の分析などを通して、怜子とあき子の親密さが原作以上に強調されていることを検証した。『女であること』については、さかえのセクシュアリティの揺らぎを表現するにあたって、川島雄三の独特な空間がもたらす効果を論じたうえで、映画ではさかえの欲望がつねに市子に向けられていることを指摘した。さらに、『雪夫人絵図』以降の久我のイメージを辿り、『挽歌』と『女であること』において疑似母娘関係が強化されたことが、「特殊児童」という久我のスター・ペルソナと結びついていることを確認した。

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