抄録
U-統計量は多くの重要な統計量を含む広いクラスをなし,その推定しようとしている母数の最小分散不偏推定量であり,緩い条件のもとで漸近正規性が成立する.しかしながら,このように大きな長所をもつにもかかわらずU-統計量は実際の統計的推測では意外に使われていない.U-統計量の計算がきわめて大きな計算量を要求することがその一因である.本論文では2標本問題において計算量が小さくかつU-統計量の良さをなるべく損わない不完全U-統計量を提案し,応用上重要な四つの場合にその最適な形を導き,完全U-統計量との効率を比較する.