日本CT技術学会雑誌
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原著
薬物動態学的原理に基づく非線形回帰分析を用いた動脈CT検査おける 体格依存性改善のための造影剤量決定法について
日比野 友也市川 勝弘
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2019 年 7 巻 2 号 p. 6-

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抄録

重要な要点

・薬物動態の基本原理において,血漿中の薬物濃度と薬物分布容積の関係は,反比例の非線形関係である.

・薬物動態の非線形性に基づく新たな造影剤量決定法により,動脈造影値における体格依存性の改善が可能であった.

・新たな造影剤量決定法の元では,体重が動脈造影値における体格依存性の改善に簡便で有効な体格指数であった.

要旨

[目的]: 本研究の目的は,computed tomography (CT) による血管造影 (CT angiography: CTA) の動脈造影における体格依存性を改善するための,薬物動態原理に基づく非線形回帰分析を用いた新たな造影剤量決定法を提案することである.

[方法]: 非線形回帰分析は,固定造影剤量で冠動脈CT検査を施行した被検者118名の動脈造影値(造影CT値-単純CT値)データを用いて行われた.分析結果から, 4種の体格指数 (体重,除脂肪体重,血液量及び体表面積) のそれぞれの造影剤投与関数を決定した(提案法).118名の動脈造影値データから,決定した投与量における造影値をシミュレートし,体格依存性を検証した.体格依存性は,体格指数と動脈造影値の間の相関係数とP値 (P < 0.05:有意な依存性) 及び平均絶対誤差 (mean absolute error: MAE)を用いて評価した.

[結果]: 従来法ではすべての体格指数で有意な体格依存性が示され(高い相関係数とP<0.05),提案法によってすべて改善された.Body weight (BW),Lean body weight (LBW) 及びBlood volume (BV) のMAEは提案法で従来法より有意に減少した (P < 0.05) .

[結論]: 提案法は従来法に比較し,BW,LBW及びBVの動脈造影における体格依存性の改善を認めた.提案法を用いることで,身長の情報を必要としないBWは簡便で体格依存性を改善する適切な体格指数となり得ることが示唆された.

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