抄録
カチオン性薬物のクロルプロマジン(CPZ),プロメタジン(PMZ),アニオン性薬物のフルフェナム酸(FA)およびメフェナム酸(MA)のヒト赤血球の溶血,膜結合および細胞内への取り込みを比較した。イオン性薬物のヒト赤血球との結合作用は自然的,発熱的に起き,溶血と膜破壊の開始で反応は吸熱的に反転した。CPZとPMZは赤血球膜内層に高い親和力で結合あるいは進入した。この作用は薬物と膜リン脂質の疎水性相互作用の寄与による,小さい負のエンタルピー変化と大きい正のエントロピー変化が特徴である。FAとMAに対して,膜はイオン性と疎水性両相互作用による2種類の結合部位を有した。イオン性薬物誘発の溶血メカニズムを提案した。