2002 年 29 巻 1 号 p. 16-20
3ω法は金属薄膜をヒーターおよび温度センサーとして共用することにより,広い周波数領域にわたって熱測定を可能にする方法である。この方法では10kHz程度までの測定が比較的容易に行えるため,熱容量の周波数依存性を測定する熱容量スペクトロスコピーに適用されている。また測定周波数を高くすることで金属薄膜に接した試料表面付近の情報を選択的に得ることが可能となるので,薄膜試料の熱物性測定にも使われている。本報告では,液体のガラス転移の研究に誘電率測定と熱容量スペクトロスコピーの同時測定法として応用した事例について紹介する。この同時測定により,双極子モーメントの誘電緩和現象とエンタルピー緩和現象との相関が議論できることを示す。