抄録
溶液中において蛋白質等の巨大分子間に働く実効的な相互作用について解説する。特に,巨大分子が,十分離れた状態から互いに接した2量体を形成するときの自由エネルギー変化において,溶媒分子の並進運動の寄与が非常に大きい事を示す。この事を踏まえると,溶質分子(cosolute molecule)の添加効果に対して,従来の浸透圧理論が使える現象は限定される。溶媒分子の並進運動の寄与を含めたより一般的な現象論的方程式を提示する。流体の密度の不均一性まで考慮した場合との違いに基づいて議論する事でその式の適用範囲についても考察する。さらに分子認識やナノ材料の構造形成に対する熱測定の解析方法に関して述べる。