1-butyl-3-methylimidazolium(bmim)イオンおよびその関連の陽イオンをもつ様々なイオン液体の熱容量と中性子散乱の実験結果を解説する。熱容量測定から,上記のイオン液体は大きな熱容量ジャンプを伴うガラス転移を室温以下で起こすことが明らかになった。中性子散乱データから決めた平均二乗変位の温度依存性から,THzオーダーの速い緩和がガラス転移温度以上で起こることが分かった。イオン液体のガラス転移温度(Tg)と融解温度(Tfus)の関係は分子液体における経験則(Tg/Tfus=2/3)とよく一致する。Tgと陰イオンサイズの関係から,比較的強固な陰イオンフレーム中の陽イオンの再配置運動が,イオン液体のガラス転移に対して支配的な役割を果たしていると推察される。イオン液体の構造エントロピーと協同的再配置領域(CRR)の温度依存性は分子性液体と類似していた。熱容量と中性子非弾性散乱の両方の実験結果から,イオン液体ガラスにおいてもいわゆるボゾンピークが2meV付近に存在することが明らかになった。以上の結果をまとめると,bmim系のイオン液体は色々な意味で分子液体と類似していると結論できる。