2014 年 18 巻 1 号 p. 1-8
成人先天性心疾患の多くは,QOL が良好で,就業率,既婚率も高い。しかし,大部分の先天性心疾患手術は根治手術ではなく,術後の残遺症,続発症,合併症を伴う。また,修復術の有無を問わず,加齢に伴い,心機能悪化,心不全,不整脈,突然死,再手術,高血圧,冠動脈異常などにより病態が影響されることがある。成人期は,妊娠,出産,遺伝,社会心理的問題,社会保障,保険など,心臓以外にも解決すべき問題がある。また,未手術或いは姑息術のみ行われたチアノーゼ型成人先天性心疾患は,一定数存在し,チアノーゼによる多臓器異常を伴い,継続的な加療を必要とする。単純先天性心疾患も,成人後も経過観察必要とする場合が少なくない。心房中隔欠損,大動脈二尖弁などのように,成人となって,心不全,不整脈を認め,初めて先天性心疾患と診断される疾患もある。また,大動脈拡張,解離など,無症状に進行し,突然発症することもある。非心臓手術の周術期リスクは,先天性心疾患の種類,チアノーゼ型心疾患での多臓器合併症,出血凝固異常の程度,内服薬剤などに左右される。また,心臓にかかる負荷のため,病状が悪化する場合がある。複雑先天性心疾患は,修復術後も心不全,肺高血圧,不整脈などの危険因子を伴い,周術期リスクが高い。成人先天性心疾患は,小児とは異なる多彩な問題点を抱えるため,循環器を専門とする医師のみではなく,麻酔科医,産科医,産科医,専門看護師,臨床心理士などの多くの専門家が参加する共同診療システムが不可欠である。