2016 年 20 巻 1 号 p. 47-51
重症大動脈弁狭窄症(aortic stenosis;AS)を合併した98歳女性の下肢骨折に対する骨接合術が予定された。術直前の胸部X線写真で肺血管陰影の増強と心拡大を認めた。末梢神経ブロックで麻酔管理を行ったが術翌日に心不全が増悪した。経胸壁心臓超音波検査(transthoracic echocardiography;TTE)でたこつぼ型心筋症(Takotsubo cardiomyopathy;TCM)を疑い,その後の壁運動改善により診断確定とした。骨折または術中の不十分なストレス抑制がTCMの誘因と思われた。TCMの発症時期は不明だが,心不全の増悪を考え術直前の精査を行うべきであった。