2017 年 21 巻 1 号 p. 89-93
症例は26歳女性(妊娠29週)。以前より,心機能低下を指摘されていたが,放置していた。近医で心室頻拍による痙攣・意識消失があり,当院に緊急搬送された。入院時に高度の左室拡大を伴ううっ血性心不全を認め,妊娠による拡張型心筋症の急性増悪が最も疑われた。関連各科による協議の結果,心不全治療を優先した。治療開始5時間後,心室頻拍の再燃に伴う胎児心拍の低下から,全身麻酔下に緊急帝王切開となった。執刀開始直後に心室頻拍が出現したが循環動態が維持可能であったため,児を速やかに娩出させたのち,電気的除細動を行った。母児の術後経過に大きな問題はなかった。後日行われた心筋生検で拡張型心筋症と確定した。