2018 年 22 巻 1 号 p. 107-112
修正大血管転位症(corrected transposition of the great arteries, cTGA)は全先天性心疾患の1%以下と稀な疾患であり,全身麻酔の報告は少ない。今回我々は,cTGAにおける三尖弁閉鎖不全症に対し三尖弁置換術が施行された成人症例の全身麻酔を経験したので報告する。cTGA症例は解剖学的右室が体循環を担っており(systemic right ventricle, systemic RV),前・後負荷の増大に対する許容範囲が狭い。本症例のようなsystemic RV症例の麻酔管理は,術前に正確な右室機能を把握し,経食道心エコー(transesophageal echocardiography, TEE)や肺動脈カテーテル(pulmonary artery catheter, PAC),術中所見などから総合的に判断して,個別に適切な循環管理の目標値を決定することが肝要である。