2018 年 22 巻 1 号 p. 113-117
開心術や大血管手術では経食道心エコー(Transesophageal Echocardiography, TEE)が非侵襲的で安全性の高いモニターとして用いられる。しかし,稀にプローブ挿入や描出操作に伴う消化管損傷を合併し,全身状態の悪化や致死的結果を招く。今回,開心術でTEE使用による周術期の消化管損傷を3例経験した。症例1は未診断の胃前庭部毛細血管拡張症があり,術後抗凝固薬の開始から数日後に顕在化した出血性潰瘍,症例2はプローブ挿入直後に口腔内血液貯留を来たした食道損傷,症例3は術後12日目にアナフィラキシーショックを契機に胃粘膜障害が進行した裂創である。プローブ挿入が問題なく完了した場合でも,常に消化管損傷を想定した周術期管理が必要である。