血液型がAB(−)の69歳の女性に発症した急性Stanford A型動脈解離に対する上行・部分弓部大動脈置換術の麻酔を経験した。異型適合血として交差適合試験後のA(−)の赤血球濃厚液10単位とAB(+)の血小板濃厚液20単位を術中に投与した。術後の肝腎機能は一過性に軽度の悪化をみたが,臨床的に問題となる溶血反応は認めず,概ね良好に経過して術後31病日に退院した。AB型患者に対するABO異型適合血輸血では,O型の赤血球濃厚液を選択する傾向にあるが,本邦のガイドラインはA型ないしB型の赤血球濃厚液を推奨している。AB(−)型患者に対する緊急大血管手術において,ガイドラインに基づいた異型適合血輸血は有用であった。