Cardiovascular Anesthesia
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26 巻, 1 号
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巻頭言 第26回学術大会
原著
  • 佐藤 友菜, 井上 洋, 伊藤 淳, 長谷川 佑介, 関根 智宏, 尾形 優子, 山内 正憲
    原稿種別: 原著
    2022 年 26 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

    【目的】アンケート調査をもとにMinimally Invasive Cardiac Surgery(MICS)における術後鎮痛の実際と今後につき検討する。

    【方法】心臓血管麻酔専門医認定施設計179施設を対象とした。

    【結果】106施設が回答し70施設がMICSを実施していた。主な術後鎮痛法は持続末梢神経ブロックが29施設(41%)と最も多く,単回末梢神経ブロックを実施している20施設を加えると,肋間神経ブロックが32施設と最多であった。末梢神経ブロックと術後疼痛管理の実施者は半数以上で心臓外科医であった。

    【結論】末梢神経ブロックおよび術後疼痛管理の実施主体は多くの施設で心臓外科医であり,麻酔科医にはより効果的な術後鎮痛法を積極的に検討し実施していくことが求められる。

症例報告
  • 日比野 世光, 奥井 悠介, 菊池 高史, 桝田 花世, 近藤 聡子, 鳥羽 好恵
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 26 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     近年,Fontan手術の治療成績向上に伴い,Fontan術後遠隔期患者に対する悪性疾患手術の麻酔を行う機会が増えてきている。Fontan術後の状態は個々の患者によって様々であり,耐術能について,一様に判断することは難しい。心機能やFontan循環に伴う合併症,手術部位や手術時間,侵襲の大きさ等を考慮し,総合的に判断することが求められる。

     今回,Fontan術後遠隔期の左上葉肺癌患者に対し左上葉切除が予定された。術前評価の左主肺動脈閉塞試験を分離肺換気による全身麻酔で行い,耐術能の判断の一助としたので報告する。

  • 武部 真理子, 久保田 亮平, 日比 大亮, 本田 康子, 釈永 清志
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 26 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     膀胱癌に対するBCG注入療法後の感染性動脈瘤に高度な血小板減少を合併した症例を経験した。症例は64歳男性,1か月前より発熱を認め感染性胸部大動脈瘤の診断で加療されたが,切迫破裂となり当院へ救急搬送され即日ステントグラフト内挿術を施行した。来院時に検出感度以下の血小板減少があり術後も血小板数が低迷した。骨髄検査で巨核球増多を認め特発性血小板減少性紫斑病の治療適応となった。ガンマグロブリン療法,ピロリ菌除菌,血小板造血刺激因子製剤等により血小板数は回復し,術後84日目に独歩退院した。5か月後喀痰から抗酸菌が検出され,膀胱癌治療に用いられたBCG由来の感染性動脈瘤であったことが明らかになった。

  • 篠﨑 友哉, 岡本 篤史, 菊地 千歌, 井口 まり, 五十嵐 あゆ子
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 26 巻 1 号 p. 21-25
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     9カ月女児。完全型心臓脱を合併した不完全型Cantrell症候群であり,先天性心疾患はファロー四徴症,三心房心,冠静脈洞左房交通であった。出生後植皮片で心被覆され,今回心内修復と筋皮弁による心被覆が予定された。心臓と胸郭の癒着剥離時から人工心肺を使用して,心内修復では心臓の位置異常と複雑心奇形のために時間を要した。そのため止血困難や心筋浮腫を来し,心膜シートによる心被覆の際に心室の拡張障害による低血圧となった。エピネフリン持続投与および被覆の一部の解除により血圧を維持して,術後に持続血液濾過透析を導入した。心筋浮腫改善後の術後11日目に筋皮弁による心被覆がおこなわれた。

  • 武末 美幸, 田中 悠登, 大宮 浩揮, 藤中 和三, 鷹取 誠
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 26 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     ノーウッド手術およびグレン手術を施行された左心低形成症候群の10ヶ月と2歳の女児。グレン手術および開腹胆嚢摘出術の術後心電図においてQT延長を伴う巨大陰性T波が認められた。冠血管リスクの合併を認めていたが,2症例とも循環動態に大きな変動はなく冠血流の途絶などの外科的緊急性の高い病態ではないと判断し経過観察をおこなった。心電図変化出現時に胆嚢摘出術後の児に対して施行された経胸壁心エコー(TTE)では心室収縮能の全周性低下を認めた。心電図変化出現後の血液検査でクレアチンキナーゼの上昇はなくNTproBNPは上昇した。心電図は変化出現後2日と4日で改善傾向となり,改善後に施行したTTEは両児とも心室収縮能の低下を認めなかった。2症例のQT延長を伴う巨大陰性T波はストレス誘発性の心電図変化の可能性が示唆された。

  • 林 正清, 隈元 泰輔, 平岡 知江子, 中村 真吾, 洲崎 祥子, 山本 達郎
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 26 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     左房壁内血腫は,左房壁もしくは心房中隔に間隙を生じ,血液で充満した偽腔を形成する非常に稀な病態である。今回,左房壁内血腫により急性心不全を来した症例の麻酔管理を経験した。症例は79歳の男性。経皮的冠動脈形成術で冠動脈を損傷した翌日の経胸壁心エコーにて左房壁内血腫を認めた。人工心肺を用いて血腫を除去したのちに損傷した冠動脈の塞栓術を施行した。巨大な左房壁内血腫により僧帽弁における血液流入が障害され血行動態が不安定になることが懸念されたが,急激な前負荷低下と頻脈を回避することで安全に管理し得た。医原性の左房壁内血腫に対して,外科的治療とカテーテル治療を組み合わせた集学的治療が有用であった。

  • 工藤 雅響, 國澤 卓之, 小出 康弘, 小田 利通
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 26 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     70歳代,男性。上行大動脈人工血管吻合部の仮性動脈瘤に対する人工血管再置換術中にカテコラミンに反応不良な血圧低下を呈し,経食道心エコー検査(transesophageal echocardiography:TEE)で前壁・前側壁の局所壁運動異常(regional wall motion abnormality:RWMA)を認め,迅速に血行再建が必要な心筋虚血と判断し,さらにその原因が左冠動脈主幹部(left main coronary trunk:LMT)の血栓閉塞による血流途絶であるとTEEで疑い,経皮的冠動脈形成術(percutaneous coronary intervention:PCI)を施行し救命に至った症例を経験した。術中にRWMAが生じた場合,その分布の評価,責任冠動脈と原因の推定,治療効果の評価を経食道心エコー検査が担っており,患者の救命・予後に対し,重要な役割を果たしていると考えられた。

  • 井上 基, 河野 通彦, 青井 良太, 湯浅 真由美, 佐田 蓉子, 佐々木 一真, 赤澤 舞衣, 北川 裕利
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 26 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     原発性心臓腫瘍は稀な疾患である。なかでも右室腫瘍の頻度は低く,患者の麻酔管理を行う機会は少ない。右室腫瘍摘出術では腫瘍塞栓による右室流出路の閉塞が循環虚脱を引き起こす可能性に十分な注意を要する。今回,高度な右室流出路狭窄をきたした心臓腫瘍摘出術を安全に管理しえたので報告する。症例は右室流出路から肺動脈弁にかけての腫瘍を指摘され,右室流出路狭窄解除を目的に腫瘍摘出術が予定された。術前カンファレンスにて腫瘍塞栓による循環虚脱への対応を協議し,体外循環をスタンバイしながら麻酔導入を行うこととした。麻酔導入時のリスクを十分に考慮し対応策を講じるとともに,麻酔科医をはじめとする多職種連携が重要であった。

  • 法華 真衣, 小幡 典彦, 江木 盛時, 溝渕 知司
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 26 巻 1 号 p. 49-53
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     Eisenmenger症候群患者の非心臓手術における周術期合併症の発生リスクは高く,死亡率も3.8~24%と高い。周術期管理では,右左短絡の増加をきたさないように体血管抵抗と肺血管抵抗のバランスを考慮し,心拍出量を保つ必要がある。今回,未修復の房室中隔欠損症に伴う重症肺高血圧症を合併した50歳台のダウン症患者の大腿骨骨折手術に対して,末梢神経ブロックによる鎮痛とデクスメデトミジンによる鎮静の併用により安全に麻酔管理を行うことができた1例を経験したので報告する。

  • 長島 佳代, 竹内 かおる, 北村 健, 深水 誠二, 羽深 鎌一郎
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 26 巻 1 号 p. 55-59
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     経食道心エコー(TEE)による咽頭外傷に起因する深頸部膿瘍を経験した。72歳男性,心房細動に対し経皮的カテーテル心筋焼灼術が予定され,術前TEE検査が外来で意識下に行われた。検査数時間後から咽頭痛の増悪と血痰を認めていた。喉頭内視鏡検査で披裂部から梨状窩にかけて裂創があり,TEEによる咽頭外傷と診断した。受傷後3日目に発熱し,CTで右頸部に気腫性変化を伴う液体貯留があった。深頸部膿瘍の疑いで緊急手術となり,全身麻酔下に排膿ドレナージ術,気管切開術を施行した。術後経過は良好であり,軽快退院した。TEE検査後は合併症を念頭に,診断が遅れないよう症状出現に注意する必要がある。

  • 髙橋 貴子, 鈴木 尚志, 大額 明子, 水木 絵理, 飯島 毅彦, 門脇 輔, 中村 裕昌
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 26 巻 1 号 p. 61-64
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     血液型がAB(−)の69歳の女性に発症した急性Stanford A型動脈解離に対する上行・部分弓部大動脈置換術の麻酔を経験した。異型適合血として交差適合試験後のA(−)の赤血球濃厚液10単位とAB(+)の血小板濃厚液20単位を術中に投与した。術後の肝腎機能は一過性に軽度の悪化をみたが,臨床的に問題となる溶血反応は認めず,概ね良好に経過して術後31病日に退院した。AB型患者に対するABO異型適合血輸血では,O型の赤血球濃厚液を選択する傾向にあるが,本邦のガイドラインはA型ないしB型の赤血球濃厚液を推奨している。AB(−)型患者に対する緊急大血管手術において,ガイドラインに基づいた異型適合血輸血は有用であった。

  • 田中 達士, 平野 翔梧, 鈴木 悠, 三好 宏
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 26 巻 1 号 p. 65-69
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     特発性血小板減少性紫斑病(ITP)患者における心大血管手術は周術期の出血対策が特に必要となる。本症例は手術6週間前からプレドニゾロン10 mg,エルトロンボパグ12.5 mgの内服加療を行い,血小板数は2.8万/μlから12.7万/μlまで増加した。そのため,γグロブリン療法や術前の血小板輸血を施行しなかった。また体外循環を避けるために心拍動下冠動脈バイパス術を選択した。術中は濃厚血小板20 Uを輸血し良好な止血を得ることができたが,術後にグラフト閉塞を起こした。ITP患者への冠動脈バイパス術では,血小板数増加の手段としてトロンボポエチン受容体作動薬も考慮し得るが,血栓性合併症の報告があり使用には注意が必要である。

  • 北浦 淳寛, 坂本 悠篤, 岡本 健, 中尾 慎一
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 26 巻 1 号 p. 71-75
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     レミマゾラムとレミフェンタニルを用いた非挿管下における経カテーテル的大動脈弁留置術の麻酔管理を経験した。そのうち,導入後6か月間の全41例について後方視的に検討した。レミマゾラムを用いた麻酔法は,フルマゼニルの使用により速やかで確実な覚醒を提供するだけではなく,比較的容易に不動術野と安定した循環動態が提供できた。また,高度な気道確保を用いなくとも,ほとんどの症例で安定した呼吸状態を提供することが可能であった。

  • 山北 俊介, 藤田 太輔, 武智 大和, 山田 知見, 飯田 淳, 佐和 貞治
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 26 巻 1 号 p. 77-80
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     レミマゾラムは新しいベンゾジアゼピン系鎮静薬であり,短時間作用性であることから,全静脈麻酔(TIVA)に用いられている。しかし,小児での臨床使用経験は少なく,特に人工心肺(CPB)を用いた小児心臓手術におけるレミマゾラムの有効性と安全性は報告されていない。悪性高熱症を発症した可能性が否定できない小児に対して,CPBを用いた心臓手術にレミマゾラムTIVAで管理した症例を経験したので報告する。

  • 本田 崇紘, 山下 敦, 関田 昭彦, 杉村 憲亮, 安藤 寿恵, 戸田 雅也, 岡本 浩嗣
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 26 巻 1 号 p. 81-85
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     同一家系内の二人のLoeys-Dietz症候群患者の複数回の麻酔を経験した。症例1 : 50歳女性,2回の大動脈解離に対して緊急手術を行った。いずれも挿管・動脈ライン確保に難渋し出血量も多かった。経過中,置換部遠位端の大動脈破裂により死亡した。症例2 : 30歳女性,症例1の長女。大動脈拡大に対して待機的に基部~胸腹部大動脈置換を3回に分けて行った。症例1を踏まえることで挿管・動脈ライン確保はスムーズに行え,経過良好である。

     本疾患はMarfan症候群類縁疾患であり,より若年で大動脈解離や破裂を生じうる。血管蛇行,頭蓋骨早期癒合,先天性心疾患,関節拘縮,特徴的顔貌なども合併しやすいため,周術期管理に細心の注意を要する。

  • 新原 史大, 佐々木 怜, 三好 ふたば, 福島 紘子
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 26 巻 1 号 p. 87-92
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     大動脈弁無冠尖から僧帽弁前尖への移行部には,心筋組織や血管を含まない線維組織で構成されるMitral-Aortic Intervalvular fibrosa(MAIVF)と呼ばれる領域が存在し,様々な要因で仮性瘤が形成される。今回大動脈弁基部置換術後の基部仮性瘤に対し基部再置換術を予定された2症例で,術前の造影CTや経胸壁心エコーではわからなかったPseudoaneurysm of Mitral-Aortic Intervalvular Fibrosa(P-MAIVF)を術中の経食道心エコーで診断し,正確な位置の所在を確認し術式選択に寄与した。手術歴や既往歴からP-MAIVFを疑う場合,経食道心エコーの評価により病変の情報を外科医に提供し,適切な術式の選択に貢献することができる。

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