2023 年 27 巻 1 号 p. 31-36
30代女性。重症妊娠高血圧症のため妊娠33週で硬膜外麻酔併用脊髄くも膜下麻酔下に緊急帝王切開術を施行した。術前から軽度呼吸困難感と低酸素血症を認めた。術後胸部レントゲン写真で肺うっ血を認め,心臓超音波検査で左室拡大を伴うびまん性左室収縮能低下を認めた。血液検査でNT-proBNPが上昇していた。カテコラミン投与と非侵襲的陽圧換気療法により心機能は正常下限まで改善した。最終的に周産期心筋症と診断された。周産期心筋症における軽微な心不全症状は,健常妊産婦も訴える症状に似ているが,心不全の診断や治療介入を適切に行うためには,心臓超音波検査やNT-proBNP検査を早めに行うことが重要である。