1995 年 14 巻 3-4 号 p. 3-4_135-3-4_139
網膜電位(ERG)の安全性試験への応用を目的にイヌを用いて検討した。
塩酸エタンブトール(EB, 500 mg/kg/day)を7日間反復経口投与した結果,眼底の色調の変化並びにERG波形のa波およびb波に潜時の延長傾向並びに振幅の低下傾向が窺われたが,視覚異常を示唆する行動変化は認められなかった。その後,4週間の休薬によっても眼底の色調の変化は回復しなかったが,ERG波形は回復傾向を示した。
イヌでは無麻酔で網膜電位を測定する場合,眼球の動きあるいは筋電によると思われるノイズがERG波形に現われることから,動物の保定に工夫が必要であったが,技術的には経験の積み重ねにより安全性試験での応用は充分可能であると思われた。
今後はERG波形の変化と網膜の病理組織学的変化との関連を検討する一方で,背景データの蓄積が急務であると思われた。