比較眼科研究
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総説
N-methyl-N-nitrosoureaによる網膜障害の比較病理学的検討
螺良 愛郎義澤 克彦三木 弘彦大石 裕司藤井 登志之
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1998 年 17 巻 3-4 号 p. 3-4_97-3-4_103

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抄録

N-mehyl-N-nitrosourea (MNU)による網膜障害を系統発生的にみると、齧歯目(マウス・ラット・ハムスター)・食虫目(トガリネズミ)・霊長目(サル)といった広範な哺乳類の成獣への単回投与により、各種属に雌雄差なく視細胞アポトーシスに起因する網膜変性症が惹起される。これは、ヒト網膜色素変性症(Retinitis pigmentosa)と同一機転によるが、サルではヒトと同様赤道部に病変が初発するのに対し、マウス・ラット・ハムスター・トガリネズミでは後極部より病変が始まる。一方、ヒトでは視細胞アポトーシスに続発して色素上皮細胞の網膜内遊走、次いで網膜内血管周囲集簇が生じるが、マウス・トガリネズミ・サルでは色素上皮細胞の網膜内遊走はみられず、ラットでは色素上皮細胞の遊走はみるが網膜内血管周囲集簇は認めず、ハムスターのみ網膜内血管周囲集簇を呈する。MNUの網膜障害を個体発生的にみると、MNUのマウスへの単回投与を網膜細胞増殖期(生後1日あるいは3日)に行うと、ロゼット形式で特徴づけられる網膜異形成の発生をみるが、網膜細胞分化期(生後5あるいは8日)では網膜は形態変化を示さず、網膜が分化した後(生後11日以降)、では網膜変性をみた。MNUは性差・種属差なく網膜障害を誘発するが、投与時期により網膜の反応は異なる。

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© 1998 Japanese Society of Comparative and Veterinary Ophthalmology
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