病理組織学的検査により全身の諸臓器に細動脈硬化を認め細動脈硬化症と診断されたマルチーズ犬の眼所見を経過観察した。初診時の眼所見では両眼ともに結膜、上強膜の充血がみられ、右眼では前房水の混濁、左眼では前房出血が観察された。眼内圧は右眼35mmHg、左眼31mmHgと両眼ともに中等度に上昇しており、緑内障を続発していると考えられた。眼圧降下剤、止血剤、消炎剤の投与により両眼ともに前眼部の症状は急速に改善されたが、老齢性と思われる白内障の水晶体赤道部から僅かに透見できる網膜からは正常なタペタム反射は見られず、硝子体出血ならびに網膜出血が認められた。動脈硬化症をはじめ眼所見の異常をともなう加齢性疾患が増加すると考えられ、眼科学的検査の重要性は増するものと思われる。