1989 年 8 巻 1-2 号 p. 27-32
老齢のKyo: Wistar系雄ラットに発現した眼球腫瘍の病理学的検索を実施した。病変は左眼球にのみ認められた。腫瘍組織は塊状に増殖する紡錘型ないし多型性の腫瘍細胞より成っていた。腫瘍細胞は長円型の核および好酸性の細胞質を有し,細胞異型度は低かった。腫瘍組織は眼球中膜部を中心に増殖していたが,強膜破壊を伴う眼球外への増殖および眼球内への増殖もみられた。さらに,腫瘍細胞は抗S-100蛋白抗体に対し強陽性を示した。電顕的に,腫瘍細胞は互いに密着することは少なく,接着装置を欠いていた。また,長く延びた多数の細胞突起が特徴的であった。細胞質は細胞内小器官に富み,メラノソームを思わせる高電子密度の円型構造物を認めた。以上の所見から本腫瘍は脈絡膜の悪性黒色腫と診断された。