比較眼科研究
Online ISSN : 2185-8446
Print ISSN : 0286-7486
ISSN-L : 0286-7486
8 巻, 1-2 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
Lecture and Reports at 8th Symposium on Some Problems in the Field of Comparative Ophthalmology
第8回談話会特別講演
話題提供
  • 渋谷 一元, 田島 正典, 山手 丈至, 工藤 悟
    1989 年 8 巻 1-2 号 p. 23-26
    発行日: 1989年
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    2匹の6週齢のSlc: Wistarラットに一側性視神経欠損症が認められた。眼科学的検査により,1匹に固定瞳孔が,2匹に視神経乳頭及び網膜中心静脈の欠損が認められた。剖検では,2匹とも左側の視神経が眼球後極から視交叉まで完全に欠損しており,右側の視索は著しく細くなっていた。欠損側の眼球の大きさは正常であった。組織学的に,視神経乳頭の欠損,網膜萎縮,網膜のロゼット形成及び毛様体の低形成が2匹に,さらに網膜下出血及び脈絡膜の結合組織の結節性増生が1匹に認められた。網膜の脳層,特に神経細胞層及び神経線維層の萎縮が著しく,脳層/全層比が明らかに低下していた。右側の視索が著明に萎縮していたが,そこに変性性あるいは炎症性変化は認められなかった。上記の検索の結果,これら2症例は,病理組織学的に網膜の低形成を伴う先天的な一側性視神経無形成と診断された。

  • 乾 俊秀, 山村 高章, 湯浅 啓史, 堀 正樹, 岡庭 梓
    1989 年 8 巻 1-2 号 p. 27-32
    発行日: 1989年
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    老齢のKyo: Wistar系雄ラットに発現した眼球腫瘍の病理学的検索を実施した。病変は左眼球にのみ認められた。腫瘍組織は塊状に増殖する紡錘型ないし多型性の腫瘍細胞より成っていた。腫瘍細胞は長円型の核および好酸性の細胞質を有し,細胞異型度は低かった。腫瘍組織は眼球中膜部を中心に増殖していたが,強膜破壊を伴う眼球外への増殖および眼球内への増殖もみられた。さらに,腫瘍細胞は抗S-100蛋白抗体に対し強陽性を示した。電顕的に,腫瘍細胞は互いに密着することは少なく,接着装置を欠いていた。また,長く延びた多数の細胞突起が特徴的であった。細胞質は細胞内小器官に富み,メラノソームを思わせる高電子密度の円型構造物を認めた。以上の所見から本腫瘍は脈絡膜の悪性黒色腫と診断された。

  • 鈴木 通弘, 小川 浩美, 長 文昭, 本庄 重男
    1989 年 8 巻 1-2 号 p. 33-38
    発行日: 1989年
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    光の透過率の異なる面を着用した観察者の眼に対する,カニクイザルの凝視反応を利用する視覚判定のための簡単な方法を考案した。本法を,眼底の正常な個体および黄斑変性所見を示す個体に適用の結果,後者の視覚機能は,前者のそれに比べ明らかに劣っていると判定された。さらに,黄斑変性の程度に応じた視覚機能の差も認められた。

    我々はこれまでにカニクイザルの眼科学的検査法のひとつとして眼底検査を取り上げ,加齢に伴う標準像の変化や自然発生の異常像について報告してきた9-15)。ここでは,光の透過率の異なる面を着用した人の眼に対するカニクイザルの凝視反応を利用する視覚機能判定のための簡単な方法と16),この方法を使用し,黄斑変性所見を示す個体の視覚機能を調査した成績を紹介する。

  • 久世 博, 乾 俊秀, 山村 高章, 堀 正樹, 岡庭 梓
    1989 年 8 巻 1-2 号 p. 39-46
    発行日: 1989年
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    ジンクピリチオン(ZPT)を各種実験動物,すなわちカニクイザル,イヌ,ネコ,有色モルモット(Strain 13), アルビノモルモット(ハートレイ),スナネズミに強制経口投与し,ZPT網膜症の発現の有無を,眼科学的,電気生理学的そして病理組織学的に検索した。

    脈絡膜壁紙を有しない動物,すなわちカニクイザル,有色およびアルビノモルモット,スナネズミではZPT網膜症の発現はみられなかった。ネコではZPT 15mg/kgの15回経口投与により,眼底検査で脈絡膜壁紙部の反射性低下を認めた。また,ERG所見でもaおよびb波の波高の低下が観察された。

    イヌでは,10, 5および2.5 mg/kgの投与量でZPTを経口投与したが,いずれの投与量においても両側の眼底に変化が認められた。

    10 mg/kgの投与量では,24カ月齢の動物を用いたため病変は軽度で,眼底検査で脈絡膜壁紙部の反射性の低下を,また,ERGでaおよびb波の軽度の波高の低下を観察した。なお,病理組織学的観察では異常は認められなかった。

    一方,5 mg/kgの投与量では12カ月齢の動物を用いたこともあり,眼底乳頭上部に網膜下浮腫および網膜内出血が観察された。また,ERGではaおよびb波の波高の低下を認めた。

    2.5 mg/kgから5 mg/kgの漸増投与群では,使用動物の頭蓋骨の視覚野上および脳内の外側膝状体核に電極を埋め込み,視覚誘発電位(VEP)および外側膝状体核(LGN)における電位も記録した。その結果,ERGの電位の低下がVEPおよびLGNの電位の低下に先行して生じる事が判明した。また,眼底所見では,乳頭上部における脈絡膜壁紙部の反射性の低下が同様に観察された。病理組織学的観察では,脈絡膜壁紙は薄くなり,電顕観察では壁紙細胞質内の棒状構造物(tapetal rods)の粗面小胞体は拡張し,変化の強い例では,tapetal rodsの消失も認められた。

示説発表
原著
  • 鈴木 通弘, 成田 勇人, 浜野 政章, 福井 正信, 長 文昭, 本庄 重男
    1989 年 8 巻 1-2 号 p. 77-80
    発行日: 1989年
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    閉鎖環境下維持の野性由来および育成カニクイザル計3,800頭の眼底を調査した結果,網膜の動脈および静脈がピンクあるいは乳白色調を呈し,動・静脈を色調により区別することの困難な野生由来ザル6頭を認めた。それらは,入荷時推定5歳齢以上,その後2-15年間飼育されており,その他の臨床所見としては,体重の著名な増加およびその後の減少,重度の乳糜血清,血清中の総コレステロールと中性脂肪の高値,高血糖,高ブドウ糖尿,高ケトン体尿,多尿,多飲,過食等が認められた。これらの所見により,それら6頭は網膜脂血症と診断された。

feedback
Top