比較眼科研究
Online ISSN : 2185-8446
Print ISSN : 0286-7486
ISSN-L : 0286-7486
話題提供
各種実験動物におけるジンクピリチオン網膜症の発現
久世 博乾 俊秀山村 高章堀 正樹岡庭 梓
著者情報
ジャーナル フリー

1989 年 8 巻 1-2 号 p. 39-46

詳細
抄録

ジンクピリチオン(ZPT)を各種実験動物,すなわちカニクイザル,イヌ,ネコ,有色モルモット(Strain 13), アルビノモルモット(ハートレイ),スナネズミに強制経口投与し,ZPT網膜症の発現の有無を,眼科学的,電気生理学的そして病理組織学的に検索した。

脈絡膜壁紙を有しない動物,すなわちカニクイザル,有色およびアルビノモルモット,スナネズミではZPT網膜症の発現はみられなかった。ネコではZPT 15mg/kgの15回経口投与により,眼底検査で脈絡膜壁紙部の反射性低下を認めた。また,ERG所見でもaおよびb波の波高の低下が観察された。

イヌでは,10, 5および2.5 mg/kgの投与量でZPTを経口投与したが,いずれの投与量においても両側の眼底に変化が認められた。

10 mg/kgの投与量では,24カ月齢の動物を用いたため病変は軽度で,眼底検査で脈絡膜壁紙部の反射性の低下を,また,ERGでaおよびb波の軽度の波高の低下を観察した。なお,病理組織学的観察では異常は認められなかった。

一方,5 mg/kgの投与量では12カ月齢の動物を用いたこともあり,眼底乳頭上部に網膜下浮腫および網膜内出血が観察された。また,ERGではaおよびb波の波高の低下を認めた。

2.5 mg/kgから5 mg/kgの漸増投与群では,使用動物の頭蓋骨の視覚野上および脳内の外側膝状体核に電極を埋め込み,視覚誘発電位(VEP)および外側膝状体核(LGN)における電位も記録した。その結果,ERGの電位の低下がVEPおよびLGNの電位の低下に先行して生じる事が判明した。また,眼底所見では,乳頭上部における脈絡膜壁紙部の反射性の低下が同様に観察された。病理組織学的観察では,脈絡膜壁紙は薄くなり,電顕観察では壁紙細胞質内の棒状構造物(tapetal rods)の粗面小胞体は拡張し,変化の強い例では,tapetal rodsの消失も認められた。

著者関連情報
© 1989 Japanese Society of Comparative and Veterinary Ophthalmology
前の記事 次の記事
feedback
Top