2017 年 1 巻 Pre 号 p. 96-98
北海道夕張市の財政破綻から10年、発表者の現地における「映像アーカイブ・プロジェクト」のスタートからも10年になる。その意義は、「過去の痕跡」たる資料群から、地域再生の手掛かりを見出し、市民の建設的コミュニケーションに資することにある。しかし、ローカル・コミュニティにおけるアーカイブの構築には、ナショナルかつトップダウンで行われるプロジェクトとは異質な壁、ハードルが多数存在している。本発表ではそれらを正視し、アーカイブ・プロジェクトが公共性の実現に寄与するための課題に迫ることを目標にしている。特にここで提起したい問題は、「ダークアーカイブ」の重要性と、「地域の肖像権」というコンセプトの妥当性である。夕張市の事例からそれらの問題に切り込む入り口を探りたい。