2020 年 4 巻 2 号 p. 105-108
本発表では日系カナダ人の歴史保存プロジェクト「Landscapes of Injustice(以下、LOI)」の取り組みを紹介し、エスニック・コミュニティの歴史保存にデジタルアーカイブが果たす役割を考察する。ブリティッシュ・コロンビア州在住の日系人と大学教員との協働で運営されるLOIは、公文書や法務書類の収集とデジタル化を通して、戦時中の日系人財産強制売却の実態を伝えることを目的とする。報告者は2019年11月にLOI製作陣を訪問し①資料デジタル化の動機②資料管理の指針③日系人コミュニティとの関わりの3点について聞き取り調査を行った。その結果、LOIのデータベースの目的が、日系人社会や博物館との関わりを通じて学術利用から公的利用へと移り変わったこと、それに伴い日系人への文書提供などコミュニティ志向の活動が生まれたことが明らかになった。