デジタルアーカイブ学会誌
Online ISSN : 2432-9770
Print ISSN : 2432-9762
4 巻, 2 号
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第4回研究大会
第4回研究大会予稿
口頭発表
  • 前川 道博
    2020 年 4 巻 2 号 p. 85-88
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス
    J-STAGE Data

    デジタルコモンズの実現に向けては、利用者の立場に立ち、一人一人の知的生産の支援、生産された知識の共有・利用促進を図ることが必要である。本研究では、分散型デジタルコモンズを汎用的なクラウドサービスとして設計し実装するための基本モデルをとりまとめた。多様な諸地域、諸資源の状況に適応しつつ、柔軟に地域資料のメタデータ構造に適応できるデジタルアーカイブのクラウドサービスの汎用的なモデル・方式を設計し、下諏訪町地域デジタルアーカイブを構築した。

  • 島袋 美由紀, 三嶋 啓二
    2020 年 4 巻 2 号 p. 89-92
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    沖縄には「ユイマール」(相互扶助)という言葉がある。他にも「肝心(チムグクル)」(真心)や「イチャリバチョーデー」(一度会ったら皆兄弟)などがあり、これらは沖縄の人々が培ってきた社会観を表象している。しかし、現在は、個人の価値観やライフスタイルの多様化に伴い、プライバシーやプライベートが重視され、固定的で干渉される人間関係は疎まれるようになってきた。その副次的な現象として、多くの自治体では地域活動を担う人材が確保できず、住民間の紐帯が希薄になってきている。しかし、在住地域は暮らしの基盤であり、最も身近な社会である。安心安全な地域社会は、主体である住民自ら築くことが望ましく、その原動力となるのがシビックプライド(愛着や誇り)ではないだろうか。

    本稿では、地域デジタルアーカイブの構築と活用を支援するNPOの活動を紹介するとともに、被支援地域におけるシビックプライド調査について報告し、その課題について明らかにする。

  • 皆川 雅章
    2020 年 4 巻 2 号 p. 93-96
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    北海道の礎を築いた開拓者達の苦闘の痕跡や記録は各地に残っている。北海道の鉄道網は農業,水産業,林業,鉱業などの産業とともに発展したが,人口変動や産業構造の変化の影響を受け衰退した。北海道内各地の博物館・資料館に保存されている郷土資料は,人々の生活を通じて,そのような歴史を物語るものである。著者は,北海道の郷土資料の展示画像の蓄積を行いながらデジタルアーカイブ化に取り組んでいる。ここでは一般利用者の資料アクセスを容易にするデジタル資料の集約と公開方法を検討した結果を報告する。

  • 水島 久光, 椋本 輔, 上松 大輝
    2020 年 4 巻 2 号 p. 97-100
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    全国各地で映像・写真を用いたコミュニティ実践が行われている。発表者はこれまでも、ボトムアップで試行錯誤が重ねられているこれらの取組みの多くに対し、様々な距離感をもって関与・支援し、時にそれらをつないで、アーカイブ構築に関する課題や知見の共有を図る活動を続けてきた。その数々の経験を踏まえ、2019年12月2、3、5、6日の4日間、神奈川県秦野市にて「夕暮れ映像祭2019」というイベントを開催した。地域を題材にした映像上映を核に、各地のデジタルアーカイブのアクチュアルなコミュニティとの関係を問い、ショーケース化する試みである。本発表では、このイベントを契機に、各地のプロジェクトのネットワークハブとなるデータベース「学前ローカルイメージラボ」(バーチャル・ラボ)を立て、その公開と活用を介した循環的運動体としてアーカイブ連携を推進していく構想について報告する。

  • 林 知代
    2020 年 4 巻 2 号 p. 101-104
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    ビックデータやAIで活用されるデータがファクトデータを中心とされているのに対し、デジタルアーカイブで収集されるデータは、ファクトデータとそれに付随するメタデータを一対の記録としてとらえられている。デジタルアーカイブの記録では、メインのデータとなるマルチメディアファイルとそれを説明する文字情報を一対として記録・管理する事が重要な要素となると考える。そこで、本研究では、岐阜県美濃市で開催される美濃祭りの花みこしの祭りと準備の記録をとりあげ、デジタルアーカイブとしてどのようなデータが収集できるかを実践し、その情報の構成について検討したので報告する。

  • 稲葉 あや香
    2020 年 4 巻 2 号 p. 105-108
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本発表では日系カナダ人の歴史保存プロジェクト「Landscapes of Injustice(以下、LOI)」の取り組みを紹介し、エスニック・コミュニティの歴史保存にデジタルアーカイブが果たす役割を考察する。ブリティッシュ・コロンビア州在住の日系人と大学教員との協働で運営されるLOIは、公文書や法務書類の収集とデジタル化を通して、戦時中の日系人財産強制売却の実態を伝えることを目的とする。報告者は2019年11月にLOI製作陣を訪問し①資料デジタル化の動機②資料管理の指針③日系人コミュニティとの関わりの3点について聞き取り調査を行った。その結果、LOIのデータベースの目的が、日系人社会や博物館との関わりを通じて学術利用から公的利用へと移り変わったこと、それに伴い日系人への文書提供などコミュニティ志向の活動が生まれたことが明らかになった。

  • 中村 覚, 宮本 隆史, 片桐 由希子
    2020 年 4 巻 2 号 p. 109-112
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    東京文化資源会議の地域文化資源デジタルアーカイブ・プロジェクトは、さまざまな主体が地域の文化資源をデジタルアーカイブ化し、それを住民が活用することによって、地域コミュニティの活性化につなげる仕組みの構築を狙いとして活動している。本報告では、その活動の一環として、千代田区の後援を受けて実施した「デジタルアーカイブ・ワークショップ」の内容と結果について紹介する。ワークショップでは、「小中学校のおもいで」というテーマを設定し、参加者が持ち寄る資料をデジタル化するとともにインタビューを行い、資料に関する周辺情報も記録する。参加者には、資料の収集、デジタル化、公開、活用までの一連の作業を体験してもらい、コミュニティの中で主体的に文化資源を発掘・活用する方法に触れる機会とする。本プロジェクトでは、このワークショップによる経験を通じて、地域コミュニティがアーカイブを生成する方法を模索する。

  • 真鍋 陸太郎, 水越 伸, 宮田 雅子, 田中 克明, 溝尻 真也, 栗原 大介
    2020 年 4 巻 2 号 p. 113-116
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,コミュニティ情報を持続可能な地域・コミュニティに必要不可欠なものと位置付け,コミュニティ情報の収集・蓄積・活用とその有機的な相互作用も含む一連のプロセスを「参加型コミュニティ・アーカイブ」とし,地域・コミュニティの持続可能性に寄与できる「参加型コミュニティ・アーカイブのデザイン」のあり方について,文京区で展開されてきた「文京あなたの名所ものがたり」や,「ことしの一文字」や「ことしかるた」および「ショートムービーコンテスト」などの大田区大森山王商店街で実践されている「商店街を街の情報拠点とするため」の一連の手法,さらに,それらの実践で活用される簡易デジタル・ストーリーテリング手法である「テレフォノスコープ」や,市民参加のためのデジタルサイネージ「まちまど」という具体的な手法・実践・技術の分析を通じて考察する.

  • 平岡 磨紀子, 向平 由子
    2020 年 4 巻 2 号 p. 117-119
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    テレビのドキュメンタリーを専門に制作しているドキュメンタリー新社は、明治の終わりから昭和40年までの古い映像を1500時間以上所蔵している。これらの映像をもとに制作されたテレビ番組「映像タイムトラベル」をデジタルアーカイブとして保存し、教育用資料として学生や研究者が、時代を検証できるように準備を進めている。すでに大学のオープンセミナーで番組を使っての授業も行われ、今年春からは、国立博物館「昭和館」(東京都千代田区)での一般公開を予定している。そのデジタル化作業段階で浮上した課題を報告する。

  • 佐藤 洋一
    2020 年 4 巻 2 号 p. 120-123
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿では、まず占領期に日本で撮影され、米国に所在する写真史料の全般的状況を現地調査に基づいて整理した。写真素材をオフィシャル写真、パーソナル写真、プレス写真の3つに、還元する主体を公的機関、研究者・コミュニティ、出版社等営利団体の3つに区分した上で、還元のあり方を分類した。さらに今後の還元の方向として、①公開度を高める、②コレクションを横断する、③地域に戻すという3つを提示した。具体的には、①研究者が保持しているオフィシャル写真を共有すること、②研究コミュニティが研究ツールとしている複数のパーソナル写真を共有すること、③撮影された場所や地点に写真を持ち込み、写真を囲む場を作ることを提示した。

  • 北本 朝展
    2020 年 4 巻 2 号 p. 124-127
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    メモリーグラフとは、同一構図かつ多時点の写真を撮影することで、景観の時間変化を重ねて記録する新しい写真術である。この写真術は古写真を用いたフィールドワーク、災害のビフォー・アフター写真、コンテンツツーリズムと聖地巡礼写真など、様々な目的に利用できる可能性を有する。本発表ではこの写真術を実現するモバイルアプリ「Memorygraph」のデータモデルや機能を紹介するとともに、モバイルアプリ開発の難しさや今後の課題などにも触れる。

  • 渡辺 暁雄, 三浦 彰人, 小関 久恵
    2020 年 4 巻 2 号 p. 128-131
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    地域の伝統建造物の「空間」を「一般的なデジタルカメラ」「全方位カメラ」「深度カメラ」で撮影したデータを閲覧した場合,それぞれの視認性、現実感、利便性、他者との情報共有、過去想起等にいかなる差異を生じるかを検証した。結果、「視認性、現実感」では1)「年齢」による生理的・生活文化的な差異 2)職業履歴による違い 3)深度カメラの技術的な課題 4)対象空間への接触頻度による相違が、「利便性」では1)合意形成時における全方位カメラ・深度カメラの有効性 2)特定の職業内容における深度カメラの有効性 3)伝統的建造物の修復に際しての深度カメラの有効性が、「過去想起」では1)プリントされた写真の優位性 2)画像の「真正性」からくる閲覧者の記憶との齟齬の発生とそれによる不安等の感情の発生が見出された。また写真やPC画面に映し出される「空間」に関する閲覧者の語りは、他の閲覧者の語りを誘発し、地域文化の振興に寄与する可能性も見受けられた。

  • 三浦 伸也, 前田 佐知子, 池田 千春, 佐野 浩彬, 池田 真幸
    2020 年 4 巻 2 号 p. 132-135
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス
    J-STAGE Data

    災害発生時の災害・防災情報は、時々刻々と発信される情報の内容が変化し更新されていく。そのため、一部にはタイミングを逃すと取得できない情報が出てくる。防災科研では防災・災害情報を発信している各Webサイトを4時間ごとに巡回し、情報を収集・保存・整理・発信するシステムの開発をはじめた。Webサイト情報のアーカイブは、日本国内では国立国会図書館のWARPがあるが、収集間隔が発災時に頻繁に更新される災害・防災情報の収集・保存のタイミングと一致しているわけではない。またグローバルにみても、Internet ArchiveがWebサイト情報を網羅的に収集しているが、ここも頻繁に更新される災害・防災情報の収集・保存のタイミングに対応できておらず、部分的にしか災害・防災情報をアーカイブできていない状況である。

    災害発生時の災害・防災情報の収集・保存・整理・発信は、将来的に防災・災害情報を組織横断で統合したタイムラインとして生成することを目的としている。この横断・統合的災害情報タイムラインは、散逸しがちな防災・災害情報を一元的に俯瞰できることも目的としている。タイムラインの実現にあたっては可能な限りシステムを自動化し、リアルタイムに近い時間で統合した情報を発信できるようにしたいと考えている。

    現在、まずは災害・防災情報を自動収集することを目的としたシステムを開発中である。今後、巡回先(現在、139機関、217サイト巡回)を増やし、情報の収集漏れをなくすとともに、情報の精度を高め、さらに収集した情報をタイムラインへ自動反映するための研究開発と各Webサイトの災害・防災情報の発信についての提案を行う予定である。

  • 小山 真紀, 柴山 明寛, 平岡 守, 荒川 宏, 伊藤 三枝子, 井上 透, 村岡 治道
    2020 年 4 巻 2 号 p. 136-139
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,防災ワークショップを通じたデータの収集とデータベース化,保管したデータの再利用法までを合わせて提案することで,恒常的にデータの収集と活用が可能な災害アーカイブの構築とその効果を検討する.対象とするデータは,主として位置情報付きの被災当時の写真と,対になる現時点での同じ場所の写真,被災時の手記などである.ワークショップは,現在のハザードマップとこれらのデータを用いて,地域の災害危険度を確認し,同様の災害が発生した場合の被災イメージを想起させる.被災経験者がいる場合には,より具体的な状況の記憶の継承を行う.最後に,今後の対策に向けた検討を行い,参加者間で共有する.これまでに,データベースの構築,ワークショップの構成と収集すべきデータの検討を行い,ワークショップを行うことで,災害記憶の継承と,より具体的な被災イメージの醸成と対策の検討が可能になることが示された.

  • 北村 美和子
    2020 年 4 巻 2 号 p. 140-143
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    日本における災害アーカイブの継続的記録のメカニズムについて、フランク・アップウォードによるレコードコンティニュアムのモデルを使い整理した。本研究により災害後に収集された災害アーカイブのデジタル化による有効な活用方法や記録継続の必要性について述べる。持続可能な災害デジタルアーカイブを構築するためには、多くの情報を含んだ災害記録をデジタル構築し、それらの記録を地域防災・防災教育などに積極的利用することで理想的なデジタル災害アーカイブを完成させることが示唆される。

  • 加納 靖之
    2020 年 4 巻 2 号 p. 144-145
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    歴史時代に発生した地震について調べる歴史地震研究においては、地震や火山、関連する現象について書かれた史資料の収集、編纂、あるいは、それらに基づいた分析が行なわれてきた。分析の対象となる史資料は、その所蔵者によって、あるいは、何らかの事業(例えば自治体史編纂)に際して、何らかの形でアーカイブされたものであることが多い。アーカイブにおける史資料の残存状況や整理状況、利用可能性などは、過去に発生した地震の理解に対して大きな影響を与えることになる。一方、歴史地震研究の成果としての地震史料集やその編纂資料、論文や報告書等もまたアーカイブされ、以後の研究に活用されている。近年の情報技術の発展とその導入により、様々なアーカイブのデジタル化が進められ、相互の利用可能性の向上や、データの可視化に寄与している。

  • 田中 直人, 中村 弥生, 関口 光子, 小出 恵, 近藤 尚子
    2020 年 4 巻 2 号 p. 146-149
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    服飾分野の研究、教育を大学活動の柱とする本学には関連資料やローデータが多く蓄積される。しかし公開を意図された一部を除き、二次利用を促す研究資源化(資料の保存、デジタルデータ化、情報の適切な管理)は殆ど進んでいない。服飾は足場とする領域が化学、物理学、消費科学、プロダクトデザイン、歴史学など多岐にわたり、利活用が期待される資料も少なくない。ここに資源化に向けた意識醸成が望まれる理由がある。本学の研究、教育の軸は縫製やデザインの「技術」にあり、実習教材に特徴がある。とりわけ短期大学部では、1950年の設置以来、被服構成学教材、とくに完成見本である「標本」と設計図である「作図」が作成されてきた。計1,806点が残るこれらは、服飾教育のあゆみを振り返るのみならず、現代服飾の変遷や社会の諸相を知る手がかりとしても得がたい資料である。本報告はこれら資料の資源化に向けた手法を検討するものである。諸賢のご助言を賜りたい。

  • 嘉村 哲郎
    2020 年 4 巻 2 号 p. 150-153
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    中小規模のデジタルアーカイブの課題の一つに,データ保存と管理に必要な情報システムや機器の継続性があげられる。そこで,情報システムやメンテナンス費用,運用にかかる属人的要素の課題を解決する案として,オープンライセンスでデータをWeb公開・共有を可能とするWikimedia CommonsとWikidataの利用を提案する。本稿では,東京藝術大学音楽学部大学史史料室の資料を例に,これらWiki群を使用したデータ公開と活用『GLAM WIKI』について報告する。

  • 小山田 智寛, 二神 葉子, 逢坂 裕紀子, 安岡 みのり
    2020 年 4 巻 2 号 p. 154-157
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    近年、デジタルコンテンツの公開がますます盛んになり、オープンデータによるデジタルデータの活用も進んでいる。一方、フロッピーディスクやMOなどの記録メディアの問題は言うまでもなく、2019年12月のYahoo! ブログのサービス終了など、プラットフォームの変容に追随できず公開が持続できないデジタルコンテンツも増えている。東京文化財研究所では、2018年、幕末から明治大正期にかけての書画家の番付のデータベースを公開したが、これは2004年に作成され、技術的な問題で公開が停止していたデータベースのリニューアルである。このリニューアル作業を例として、デジタルコンテンツを持続させるための課題を検討したい。

  • 齊藤 有里加, 堀井 洋, 堀井 美里, 棚橋 沙由理, 高木 康博
    2020 年 4 巻 2 号 p. 158-161
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    大学機関における学術資料の保存と活用に向け、東京農工大学科学博物館をモデルに、デジタルアーカイブの手法の開発と、館内での可視化に取組んでいる。東京農工大学科学博物館所蔵の「蚕織錦絵コレクション」をIIIF規格でのデジタル化と館内NASによる可視化を行った。本稿ではデジタル化のプロセスを紹介すると共に、進行上明らかになった学術資料の可視化の上での課題と対応を例示する。

  • 有賀 暢迪, 橋本 雄太
    2020 年 4 巻 2 号 p. 162-164
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス
    J-STAGE Data

    国立科学博物館では、科学技術史資料として日本の科学者の個人資料を収集・保存している。こうした「科学者資料」にはノート、原稿、書簡、写真、辞令、身の回り品などが含まれ、展示室内で全体を紹介することが難しい。他方で、近年急速に広まっているIIIF(International Image Interoperability Framework)は、この種の資料をインターネット上で「展示」するための新たな手法をもたらしつつある。本研究では、植物学者・矢田部良吉(1851-1899)の資料を事例とし、資料画像のIIIFでの公開を前提とした上で、これを利用して電子展示を行うシステムを試作した。このシステムでは、自館の所蔵資料に他館からの「借用」資料を組み合わせ、それぞれに「キャプション」を付して、一つのストーリーの下に「展示」できるほか、「展示替え」も容易に行える。本システムは、IIIFを利用することにより、博物館が伝統的に行ってきた展示室での展示と同様のことをインターネット上で実行可能にしたものである。

  • CLANUWAT Tarin, LAMB Alex, KITAMOTO Asanobu
    2020 年 4 巻 2 号 p. 165-168
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    Kuzushiji was used as the dominant writing system in Japan for over a thousand years. However, following a reform of the Japanese language in 1900, Kuzushiji was removed from the regular school curriculum. As a result, most Japanese people today cannot read Kuzushiji. This causes difficulty in archiving and examining Kuzushiji documents. KuroNet is an end-to-end Kuzushiji transcription system that transcribes Kuzushiji documents and takes one second per page. A service for running KuroNet is available online through IIIF Curation Viewer developed by the ROIS-DS Center for Open Data in the Humanities. In this paper, we explain the basic idea of KuroNet, such as the architecture and the capabilities of KuroNet. We also discuss how KuroNet can help museums and libraries preserve historical documents, making Kuzushiji documents more accessible, and how people can learn about Japanese culture and history from using KuroNet. Finally, we suggest directions for future work which could enhance the usage of Kuzushiji documents such as full-text search, text-to-speech, and other visualization projects.

  • 橋本 雄太
    2020 年 4 巻 2 号 p. 169-172
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    近年多数の文献資料がデジタルアーカイブ化されているが、専門知識を有さない一般の人々には前近代の文献資料の読解は困難である。国立歴史民俗博物館では、同館が所蔵する中世文書資料のオンライン展示システム『日本の中世文書WEB』(以下、『中世文書WEB』)を開発・公開した。『中世文書WEB』は、展示資料の内容解説に加えて、音声による文書の読み上げとアニメーションによる翻字の強調を組み合わせた「カラオケ」式のプレゼンテーションを採用している。この手法は非常によく機能し、2020年1月8日のシステム公開後、1週間の評価期間中に5,000人を超える人々がWebサイトを訪問した。また、サイト利用者48名に対して実施したオンラインアンケートにおいても、「カラオケ」式のインターフェイスが高く評価された。これらの結果は、前近代の文献資料を幅広い利用者に展示する手法として、読み上げ音声の提供が効果的にはたらくことを示唆している。

  • 安永 知加子, 柊 和佑, 石橋 豊之
    2020 年 4 巻 2 号 p. 173-176
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    我々は、組織による地域情報の収集・蓄積・利活用を「地域の記憶」アーカイブの中核であると位置付け、収集手法、形式および保存方法、効果的な利活用手法を検討している。本稿では、組織の活動として作成されたCATVや組織内放送用動画像を地域情報資源と捉え、将来的に組織が「利活用」することを第一に考えた収集・蓄積・提供手法を提案する。

    具体的には、中部大学において約10年にわたって動画を作成し、地元CATVに番組を提供し続けているサークルである放送研究会の素材映像、番組映像および、構成台本、議事録等を収集対象とし、放送研究会および中部大学内で利活用しやすいアクセスポイントの設定および、メタデータスキーマと蓄積手法を検討した。アーカイブする対象としては、放送された映像のカット(映像の切り替わり)を中心に収集・蓄積を行う。素材を含めたアーカイブは既存の動画アーカイブと異なる点である。また、システムのガイドライン作成し、人的要因による入力情報不足を防ぐ。

  • 篠山 浩文
    2020 年 4 巻 2 号 p. 177-180
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、NHK番組アーカイブス学術トライアルにおけるNHK番組の視聴を通じて、塩田法による塩田作業を抽出・解析し、さらに塩田作業の「技・過酷さ」の共有・発信・伝承の可能性を検討したものである。「揚浜式」「入浜式」「流下式」それぞれの塩田作業をNHK番組から抽出し、特に入浜式塩田における入鍬作業を例に「技・過酷さ」の共有を検討した。 技については、文献や写真から伝わる情報とは質的に異なる情報が映像から共有される可能性が示唆された。過酷さについては映像から共有されにくく、経験者の音声や文献情報が加わることにより映像が生かされるものと考えられた。

  • 木戸 崇之
    2020 年 4 巻 2 号 p. 181-184
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    2020年1月、朝日放送グループは阪神淡路大震災の取材映像、約38時間分1970クリップを公開した。1995年の発生から四半世紀が経過し、中心被災地の神戸市ですら、震災を経験していない住民が半数近くにのぼっており、被災経験や教訓の伝承が課題となっている。公開映像には被災者の顔が映り込んだものやインタビューも多数盛り込んだが、被取材者本人や近親者からの公開取りやめの要望は寄せられていない。アーカイブ公開においてしばしば課題となる肖像権の問題をどのように検討したか、公開に向け掲げたポリシーと具体的な作業内容を報告する。

  • 山口 学
    2020 年 4 巻 2 号 p. 185-186
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    2017年の地方新聞社に対するデジタル化情報の調査の分析報告によると、多額の予算をかけてデジタルデータ化を進めたとしても、利用者をどの程度確保できるかの見通しがつかないため、採算性の確保が地方新聞社にとって重い課題となっている。またデータの公開や保存、維持については、メタデータの付与やシステム構築の問題がある。インドは英語とヒンデイー語の公用語のほか、22の指定言語がある多言語・多民族国家であり、新聞は中国に次ぎ世界第二の規模を持つ。インドの図書館や公共機関ではGreenstone,Dspaceなどのオープンソースソフトを使用した低コストの新聞デジタルアーカイブの開発が行われている。本稿ではインドのシステムを概観し、こうしたシステムが地方紙のデジタルアーカイブシステム開発に適用可能か考える。地域資料の収集主体である公共図書館の地方紙のデジタルアーカイブ開発の貢献可能性についてもインドと比較し考察する。

  • 下田 彰子, 梶並 純一郎, 遠藤 拓洋, 齊藤 有里加, 海老原 淳, 山田 博之, 小川 義和
    2020 年 4 巻 2 号 p. 187-190
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、天然記念物の保存と活用に向け、天然記念物に指定される国立科学博物館附属自然教育園をモデルに、経験に基づき行われている植生管理について、GISを活用してデータ化し、可視化する植生管理手法の開発を試みている。また、自然教育園には毎木調査データ、動植物目録や写真記録など、多数のデジタル化されたデータが蓄積されている。野外博物館である自然教育園において、これらのデータはコレクションの記録に該当し、自然の変遷を知る上で非常に意義深いものである。データは積極的に活用されることが望ましく、来園者への自然理解を深めるための展示教育への利用に取組んでいる。今回、植生管理および展示教育の観点から、自然教育園において過去60年間にわたり蓄積された毎木調査のGISデータを可視化した事例を報告する。

  • 鈴木 親彦, 北本 朝展, YINGTAO Tian
    2020 年 4 巻 2 号 p. 191-194
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本論では、人文学研究目的で収集したデータを機械学習データセットに修正して公開する過程で生じる問題について、美術史学の研究データを機械学習データセットとして再構築した「顔コレデータセット」を事例に解決方法を提案する。「顔コレデータセット」の元となる「顔貌コレクション(顔コレ)」では、美術作品に登場する顔貌をIIIF画像から収集し、メタデータを付与することで、検索性と再利用性のあるデータを提供している。しかしこれを機械学習データセットとして公開することを考えると、複数の機関が公開する画像を収集する点や、宗教的な内容などを含む点にも配慮する必要が生じる。そこでデータ配布、出展表示、利用ガイドラインを中心に検討を加え、原典画像公開者とデータセット利用者の双方に有益な公開方法を考案した。

  • 佐野 智也, 増田 知子
    2020 年 4 巻 2 号 p. 195-198
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    「日本研究のための歴史情報」プロジェクトでは、様々な資料のテキストデータ化に取り組み、研究に利用している。本報告では、テキスト処理とその結果の活用事例の一つとして、『人事興信録』の人的ネットワークの可視化について報告する。『人事興信録』は、家族・親戚情報が詳細に記載されている点に大きな特徴があり、これを利用することで、実親子関係やより広い姻戚関係の情報を得ることができる。可視化のための前提作業として、テキストデータからの親の氏名の抽出処理や、採録者との同定処理について紹介する。特に、採録者の同定処理は、他の人事情報資料を扱う際の参考になるものと考えられる。このようなテキスト処理を経て描かれたネットワーク図は、『人事興信録』原典だけでは容易にわからない人的関係性を可視化しており、実際の事例を用いてその有効性を示す。

  • 坂部 裕美子
    2020 年 4 巻 2 号 p. 199-202
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    宝塚歌劇団から、「虹の橋 渡りつづけて」という過去の在団者および主催公演のデータを完全網羅したアーカイブ本が発行されている。これの「人物編」掲載データのうち、1961年以降の入団者について、デジタルデータ化を行った上で、在団期間や各年次の退団者数の推移を集計した。2014年時点の既退団者の平均在団期間は7.92年だが、在団年数のヒストグラムを描くと最頻値は5である。歌劇団には入団後5~7年頃に退団を考えさせるような各種施策があり、実際にこの時期までに退団する者が多い。また、退団は自己判断で決められるため、各年次別の退団者総数にも多寡がある。この年次推移を見ると、ブームの到来や記念行事の開催といった歌劇団全体の動向が、各々の退団の判断に影響を及ぼしている、と考えられるような数値変動もある。このような、宝塚歌劇団の公演データ分析の、今後のさらなる進展を希望している。

  • 高橋 良平, 中川 紗央里, 徳原 直子
    2020 年 4 巻 2 号 p. 203-206
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    「ジャパンサーチ」は、我が国が保有する多様なコンテンツのメタデータを検索できる国の分野横断型統合ポータルである。本発表は、2020年夏までの正式版公開に向けて、機能改善及び連携拡大を進めているジャパンサーチについて、現時点の到達点をまとめ、今後の課題を考察するものである。すなわち、構築に至る背景と構築の目的を説明したのち、ユーザや連携機関のためのさまざまな機能、権利表示の仕組み及び連携拡大のための取組を紹介し、最後にジャパンサーチが発展していくために解決すべき課題について報告する。

  • 大井 将生, 渡邉 英徳
    2020 年 4 巻 2 号 p. 207-210
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    新学習指要領では「多面的・多角的に考える力」「膨大な情報から必要なことを判断し、自ら問いを立てる力」等が重要であるとされ、そうした力を育むために図書館・博物館等の活用が推奨されている。しかし、図書館・博物館等の教育利用は深化していない。そこで本研究では、教育現場とMLAアーカイブ群の狭間にある問題を明らかにし、多面的・多角的な視座を育むためのデジタルアーカイブ資料群の教育利用を推進する学習環境をデザインする。そのための手法としてジャパンサーチを活用し、小・中・高校で授業実践を行い児童生徒の認識変容を分析する。ジャパンサーチの活用を通して、児童・生徒自らが探求的に資料を集め、複数の資料から問いを立てることで、多面的・多角的な考え方ができるようになると予想する。長期的には通年カリキュラムに合わせたジャパンサーチ活用実践を断続的に行い、教育に特化したメタデータを付与したアーカイブ構築を目指す。

  • 大野 理恵, 細矢 剛, 真鍋 真
    2020 年 4 巻 2 号 p. 211-213
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    国立科学博物館では2019年4月現在、470万点以上の自然史系および理工系の標本資料を管理・保管している。館内の膨大な数かつ多種多様な分野にまたがる標本資料を一元的に管理し、またその情報を一般市民に公開するため、当館では標本資料統合データベース(以下統合DB)を管理・運用している。統合DBに登録されている自然史系標本のデータは、S-Net(サイエンス・ミュージアムネット)やGBIF(地球規模生物多様性情報機構)、ジャパンサーチに提供され、公開されている。本発表では、統合DBの概要と利用状況について紹介するとともに、統合DBが有する様々な課題について報告する。

  • 遠藤 拓洋, 下田 彰子, 齊藤 有里加, 山田 博之, 小川 義和
    2020 年 4 巻 2 号 p. 214-217
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    国立科学博物館附属自然教育園にて、動画撮影による植生管理手法のデジタルアーカイブ化を試みた。自然教育園は文化財保護法により、全域が天然記念物および史跡に指定され保護されるとともに、研究・教育のための野外博物館としての機能を有している。園内の植生管理においては開園当時から専門の職員が担当し、方針や大まかな手法については維持管理要綱として文書化されているが、各植栽展示の管理手法の詳細は職員の経験に基づく部分が多く、明文化されていないことが現状の課題である。そこで今回、自然教育園では現状の植生管理手法をデータ化し可視化を目指す中で、動画制作によるデジタルアーカイブ化に取り組んだ。

    生態系を考慮した植生管理手法については、一般にあまり知られておらず、デジタルアーカイブ化は自然環境保全について広く理解を深めることと天然記念物の保護と活用についての教育普及にもつながるといえる。

    今回はその第一歩として実施した動画制作の取り組みとそのプロセスについて報告する。

  • 橋本 陽
    2020 年 4 巻 2 号 p. 218-220
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本報告は、アメリカの記録管理標準であるDOD5015.2に準拠したアルフレスコを用いて、証拠能力を伴った形でどう電子記録を作成・管理していくかを検証する。まず、DOD5015.2を国防総省がどういう経緯で作成したか、その歴史的経過を追う。この中で、国防総省は、ブリティッシュコロンビア大学のUBCプロジェクトの成果を導入していた事実を指摘する。UBCプロジェクトは、ヨーロッパの伝統的なディプロマティクスとアーカイブズ学をもとに、電子記録の管理のあるべき姿について理論的考察を行なっていた。続いて、業務と記録管理のオープンソースのソフトウェアであるアルフレスコにおいて、UBCプロジェクトがどう実装されているかを確認する。実際に、文書のバージョン管理、作成者、受領者やアーカイブズ学特有の概念であるアーカイブ結合性も、XML形式のメタデータが作成されることで示されている。最後に、アルフレスコを利用する上での課題と展望を挙げる。

  • 松山 ひとみ, 井村 邦博
    2020 年 4 巻 2 号 p. 221-224
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    大阪中之島美術館(2021年度開館予定)は、これまでその総体に関してほとんど公にしてこなかった作品外収蔵資料(一次資料を主とした収集アーカイブズ)について、幅広い調査・研究への利用を促すため、所在情報の公開とアクセス提供サービスの整備に取り組んでいる。情報管理システムとして昨年度導入したArchivesSpaceは、階層記述を標準とするアーカイブズの目録を適切かつ効率的に作成・管理するオープンソースソフトウェアで、文書記録管理の専門機関ではない美術館等での採用も北米を中心に増えつつある。

    アーカイブズ管理業務の位置付けは諸機関においてさまざまであろうが、利用可能なシステムの選択肢のひとつとして、本発表では、大阪中之島美術館のArchivesSpace導入事例を紹介する。また、オープンソースソフトウェアを用いた情報管理システムの維持について、提案を共有する。

  • 大橋 正司
    2020 年 4 巻 2 号 p. 225-228
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    システム・ソフトウェアの品質については、2019年にかけていくつかのJISが整備・改訂されている。特に、システム・ソフトウェアの品質要求及び評価について定めた規格群JIS X 25000:2017 SQuaRE(Software product Quality Requirements and Evaluation)シリーズ[1]は、デジタルアーカイブの品質管理の標準化を検討する上でも品質特性の包含性が高く、参照すべき点が多い。本稿ではこれらの規格の概略と改訂の動向を紹介しながら、平成30年4月に発表されたデジタルアーカイブアセスメントツール(以下「アセスメントツール」と呼称)[2]に着目し、本ツールの記載項目がこれらの関連性の高い産業規格上どのように対応づけられうるのかを検討し、デジタルアーカイブの品質管理の標準化に向けた課題を整理する。

  • 城所 岩生
    2020 年 4 巻 2 号 p. 229-232
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    欧米でデジタルアーカイブ化が着実に進んでいる。2004年、グーグルは出版社や図書館から書籍を提供してもらった書籍をデジタル化して検索可能にする電子図書館構想を発表。米国の一民間企業主導の電子化に対して懸念を抱いたフランスのよびかけで、欧州は2005年に各国の文化遺産をオンラインで提供する欧州デジタル図書館計画、ヨーロッピアーナを立ち上げた。法制面でも孤児著作物を利用しやすくするため、2008年に孤児著作物指令、2019年にはデジタル単一市場における著作権指令を制定。後者では拡大集中許諾制度を採用、集中許諾制度は権利集中管理団体が著作権者に代わって著作権を管理する制度で団体の構成員のみが対象だが、これを構成員以外にも拡大する制度。米国でも導入の動きはあったが、グーグルの電子図書館構想に対する訴訟でフェアユースが認められたため不要とする意見が多く見送られた。欧米に比べると牛歩の観が否めない日本の対応策を提言する。

  • 澤谷 晃子, 堀井 洋, 外丸 須美乃, 西尾 真由子, 堀井 美里, 阿児 雄之, 武田 英明, 松岡 弘之
    2020 年 4 巻 2 号 p. 233-236
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    近年、地域資料は保存や継承だけではなく、オープンデータとしての公開とその利活用が強く求められている。そのためには、所蔵機関はオープンデータを提供するだけにとどまらず、その地域の市民や関係機関、研究者、専門家等と連携した二次利用や新たな展開に取り組んでいく必要があると考える。本報告では、継続的にオープンデータが利用され情報が追加され継承されていく仕組みづくりのために立ち上げたプロジェクトを紹介する。社会全体でオープンデータを共有し、「継承型学術オープンデータ」となった地域資料が、多くの人々の”知恵と情熱”を経て成長・発展し社会を巡っていく―こうしたオープンデータ/地域資料の在り方を提案する。

  • 時実 象一
    2020 年 4 巻 2 号 p. 237-240
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス
    J-STAGE Data

    デジタルアーカイブにおいても、国立国会図書館デジタルコレクション、国文学研究資料館の「新日本古典籍総合データベース」など、デジタル化書籍・書物に永続的識別子であるDOIが付与されるようになってきた。しかしデジタルアーカイブのコンテンツ、たとえば博物館資料などへの付与はあまり進んでいない。デジタルアーカイブ・コンテンツにDOIを付与すれば、それらコンテンツの活用事例の調査や収集が容易になると考えられるので、推進することを提案する。

  • 永崎 研宣
    2020 年 4 巻 2 号 p. 241-244
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    デジタルアーカイブは複数の技術の組み合わせによって構築されるソリューションであると同時に、そこにおいて暗黙的にも明示的にも知識を積み上げていくことでユーザのニーズに応えようとしてきた。しかしながら、組み合わせられるべき様々な技術は、必ずしも適切に取捨選択されているとは言えない場合がある。一方、積み上げられた知識は、しばしば暗黙的な要素を含んでおり、作成時の担当者がいなければわからなくなってしまうことが少なくない。この二つの問題は、別個の問題ではありながら、時として相互的に作用することで事態をより深刻化することがある。本発表では、この課題に関して、2020年の状況にあわせたよりよい状況を目指すための方向性を検討し、発表時点での解決の可能性を提示する。

  • 原 翔子
    2020 年 4 巻 2 号 p. 245-248
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    文化継承の場としての博物館は今や観光施設としても機能し始め,その役割は展示や教育にとどまらない.しかし博物館という閉鎖的かつ遮断されて環境下においては,モノからコトが切り離されやすいという問題を抱えている.また,展覧会の記憶は館外へ持ち出されてから時間が経ってしまうと日常生活のなかで想起させるのが難しい場合がある.展示内容には満足していても,混雑などにより満足いく鑑賞経験が得られないこともある.そこで本研究では,これらの問題解決の糸口となるような,文化継承の場における情報技術の更なる応用可能性や用途の多様性について検討したい.これまでは文化情報を伝える手段として情報技術を捉えてきたが,体験の記憶を再構築させるための情報技術の在り方こそが,文化継承に寄与することは確実だ.中でも特に,これまで展覧会図録が担ってきた役割に対する情報技術の貢献可能性を提唱する.

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