2021 年 5 巻 s1 号 p. s1-s4
編集を経ないが故にアーカイブの「原秩序尊重の原則」あるいは資料としてのリニア性が担保されている学術調査で記録される動的映像資料だが、編集を経る他の動的映像と比べ極めて冗長である。そのため「何のために記録されたか分らない」「無駄な部分が多い」と後生の研究者によって畏避されてこなかっただろうか。本稿は、冗長と見なされる部分を含む動的映像がなぜ記録されたのか、その理由ないし目的を探る。するとこうした動的映像の冗長性の一部は撮影者の「技巧」によって生み出され、分析・活用に欠かせない「痕跡」であることがわかる。