2006 年 16 巻 4 号 p. 257-268
ダムの適切な管理・運用のためには,多くのダムが位置する急峻で複雑な山岳域において,精度の高い降雨予測手法を確立することが重要である。筆者らは,これまでに黒部峡谷を対象として,ダム管理・運用のみならず,防災技術の向上も視野に入れた降雨予測手法の開発を行ってきた。本論文では,山岳域特有の降雨の発生・発達過程を定式化して予測モデルに取り込むとともに,運動学的予測モデルと物理的予測モデルを最適に合成することで,既存のモデルよりも優れた精度を有する降雨予測モデルの開発について述べる。本モデルによる予測結果は,別途開発した分布型流出予測モデルと組み合わせて,実際のダム管理に利用している。