抄録
水資源機構が管理するダム貯水池の水質鉛直分布結果等をもとに,ダム貯水池底層における嫌気層の形成とそれに伴う水質障害の発生について検討した。その結果,12ダム中,秋季から冬季にかけて嫌気化しているダムは4ダム,夏季から冬季にかけて嫌気化しているダムは2ダム,通年嫌気化しているダムは2ダムであり,全体の2/3の貯水池で嫌気化が生じる季節が存在することが分かった。また,底層が嫌気化するか否かは,富栄養化の程度の指標である,貯水池総リン濃度と湖底から放流設備までの水深に関係することが示唆された。さらに,湖底から洪水吐までの水深が浅いダム貯水池では,底層の嫌気化で発生した硫化水素が洪水時に放流されることで,硫化水素臭障害が発生しやすくなる可能性が示唆された。