本研究は,GPS堤体変位計測システムにより得られるロックフィルダムの連続的な堤体変位データを利用して,堤体の安全性・健全性を評価する手法を検討するものである。GPS計測システムが導入された2基のロックフィルダムについて,貯水位-堤体水平変位関係の平均勾配から,堤体の変形特性の経年推移を評価した。大保脇ダムでは堤体全体の剛性が経年的に高まり安定傾向にあることがわかった。石淵ダムでは東北地方太平洋沖地震時に10mm程度堤体が変位し,変形特性が一時的に変化したように見受けられたが,その後は地震前と同様の変形特性に回復し,地震による顕著な影響は受けなかったものと判断された。以上の事例から,GPSによる堤体変位の連続計測に基づく,貯水位-堤体水平変位の関係は堤体の安全性・健全性を評価する一つの指標となりうることが示された。