抄録
本研究では,液体急冷凝固法(LRS法)を用い,β相の析出を抑制した本合金に対して再度溶解し,その後の凝固条件すなわち水冷および空冷凝固させた場合,および両凝固後,高温溶体化処理を施した場合におけるβ相の析出挙動から,ミクロ組織と硬さとの関係を検討した.その結果,次のような結論を得た.1.β相の存在しない試料を溶解し,水冷凝固させた組織は等軸晶状組織を呈し,凝固過程でβ相は析出しなかった.高温溶体化処理でもβ相は析出せず,硬さは低下した.空冷凝固の場合はβ相が析出し,高温溶体化処理で硬さは向上した.2.β相の存在するas-received材を溶解・水冷凝固した凝固組織はデンドライト組織を呈し,β相は消失せず存在した.すなわち,1323Kの溶解温度ではβ相は溶解できず,母相に固溶しなかった.さらに,その後の高温溶体化処理でもβ相は消失せず,硬さは向上した.