抄録
本研究では過酸化物系,酵素系および銀系無機抗菌剤系の義歯洗浄剤浸漬90日間におけるコバルトクロム合金(Co-Cr),ニッケルクロム合金(Ni-Cr),純チタン(CpTi)およびチタン合金(Ti-alloy)の計4種類の歯科用金属鋳造体の色調安定性に及ぼす影響について,目視および色彩色差計により検討を行った.さらに,走査型電子顕微鏡(SEM)を用い変色試料の表面観察を行った.その結果,Co-CrおよびNi-Crに関しては,すべての義歯洗浄剤において,視覚上の大きな変色は認められなかった.銀系無機抗菌剤系に浸漬したCpTiおよびTi-alloy,過酸化物系に浸漬したTi-alloyは浸漬90日後,明らかな変色が認められ,SEM像においても腐食による表面粗糙化が生じた.以上の結果より,歯科用金属の色調安定性は金属材料の種類および義歯洗浄剤の種類に大きく影響されることが示唆された.