日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
頸部回旋および体幹傾斜の違いが嚥下運動に及ぼす影響
―健常群および脳血管障害におけるパフォーマンステストの比較―
田上 裕記太田 清人小久保 晃南谷 さつき金田 嘉清
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2009 年 13 巻 1 号 p. 3-9

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抄録

頸部回旋および体幹傾斜角度の違いにおける嚥下活動の変化について検討した.基本姿位は,セミファーラー位60° とし,頸部回旋および体幹傾斜角度の相互関係を考慮し3 つの姿勢条件を設定した.① 姿位A:頸部正中位,体幹正中位,② 姿位B:頸部30° 回旋位,体幹正中位,③ 姿位C:頸部正中位,体幹30° 傾斜位. 対象は,健常群として嚥下に関して日常生活に支障をきたしていない健常高齢者11 名,疾患群として脳血管障害者13 名とした.健常群および疾患群において水のみテスト(以下,WST),反復唾液嚥下テスト(以下,RSST)を施行した.WST は,プロフィールから陰性,陽性に判別し,RSST は判定回数をそれぞれ各姿位間で比較検討した.健常群における各姿位間のWST およびRSST についてみると,いずれも有意差は認められなかった.一方,疾患群におけるWST について比較すると,姿位A および姿位C は,姿位B に対し陰性が有意に多かった.また,RSST について検討すると,姿位A および姿位C は姿位B と比較し,有意な高値を示した.健常群と疾患群におけるWST の群間比較では,姿位B において健常群は疾患群と比較して有意に良好な成績を認めた.RSST の比較では,姿位A,姿位B および姿位C のいずれにおいても疾患群に比較して健常群は有意な高値を認めた.以上の結果より,セミファーラー位60° の姿位において,頸部を正中位にすることの有効性が示唆された.また,麻痺側の咽頭通過障害をきたす摂食・嚥下障害者に対し,頸部のみを回旋するのではなく,頸部は正中位に保持したうえで,体幹傾斜位にすることの有用性が示唆された.

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© 2009 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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