日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
症例報告
乳幼児反復性喘鳴の改善に対し摂食・嚥下リハビリテーションが有効と思われた4 例
田杭 櫻子川戸 仁向井 美惠
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2010 年 14 巻 2 号 p. 162-171

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抄録

乳児喘息として早期介入を行ったものの症状の改善に乏しい難治症例に対し,摂食・嚥下リハビリテーションを行って気道症状の改善をみた4 例を経験した.初診時,全例に摂食・嚥下機能発達の遅れ,食形態・介助不適がみられ,3 例に食欲不振がみられた.

【症例1】1 歳8 カ月男児.ダウン症候群.10 カ月時に喘息加療開始後も改善せず,誤嚥の疑いで紹介.初診時,後期食を舌突出嚥下により丸呑みし,食事中喘鳴増悪.食形態・介助法・哺乳瓶使用姿勢を指導.喘鳴は改善し,管理薬は漸減した.

【症例2】11 カ月男児.片側口唇裂.5 カ月時に喘息加療開始後も改善せず,嚥下障害の疑いで紹介.初診時,捕食・押し潰し機能不全と評価.食欲不振あり.食形態,捕食訓練を指導.喘鳴は改善し管理薬は漸減した.

【症例3】1 歳4 カ月女児.基礎疾患なし.1 カ月時にRS ウイルス感染,胃食道逆流症で入院.以後,喘鳴と炎症で入退院を反復.6 カ月時より喘息加療開始後も改善せず,誤嚥の疑いで紹介.初診時,幼児食刻みを水分で流し込み,ムセ・喘鳴頻繁.食形態・食環境不適と評価.食欲不振あり.入院時中心の指導で機能発達がみられ,管理薬は減少されていないものの発作頻度は減少した.

【症例4】1 歳4 カ月男児.基礎疾患なし.胃食道・鼻咽頭逆流症疑いにより4 カ月よりミルクに増粘剤添加,10 カ月より喘息加療開始後も喘鳴改善せず.嚥下障害の疑いで紹介.初診時,咀嚼機能不全,食形態不適と評価.食欲不振あり.鼻咽腔閉鎖訓練と食形態を指導し,喘鳴と食事量は改善した.

指導により,全例に喘息発作の回数および管理薬の減少と摂食・嚥下機能発達の遅れの改善が認められ,食欲不振の3 例中2 例に改善がみられたことから,摂食・嚥下リハビリテーションが乳幼児の反復性喘鳴の改善に寄与する可能性が示唆された.乳児喘息の難治症例では,嚥下障害の可能性も考慮して,摂食・嚥下機能評価を行い対応することが必要なのではないかと考えられた.

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© 2010 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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