2010 年 14 巻 3 号 p. 212-218
【目的】大学附属病院のような急性期病院NST への歯科の参加は,経口摂取の開始に必要となる口腔機能の評価や改善を可能にするが,口腔機能と栄養摂取法の関連については,その詳細は明らかになっていない.当院NST では,歯科医師がコアメンバーとして参画し,口腔機能評価を行い,口腔の専門家として栄養摂取法に関する提言を行っている.そこで本研究では,NST 初診患者の臨床統計学的分析を行い,経口摂取の状況と口腔機能の関連を検討し,また,その後歯科受診となった要因を検討することで,NST における歯科の役割を明確にすることを目的とした.
【対象と方法】対象は,平成17 年12 月1 日から平成20 年11 月30 日までの3 年間でNST 初診時に口腔機能評価を行い,記録に不備のない患者80 名とした.患者の基本情報について臨床統計学的分析を行い,また,経口摂取の有無およびNST 初診後の歯科受診の有無を従属変数とし,経口摂取に関する要因を説明変数として,ロジスティック回帰分析を行った.
【結果】患者の多くは高齢者で,原疾患は頭頸部腫瘍が多かった.栄養摂取法は,経管栄養のみで経口摂取を行っていない患者が56% であった.口腔衛生状態は全体の64% で不良であり,口内炎など口腔軟組織疾患が42% に認められた.非経口摂取となる要因としては,肺炎の既往,摂食・嚥下障害,口腔軟組織疾患が有意であった.また,NST 初診後に歯科依頼となる要因としては,口腔衛生状態不良,摂食・嚥下障害が有意であった.
【結論】摂食・嚥下障害や口内炎といった口腔の要因は,経口摂取などの入院患者の栄養管理に影響を与え,また,それらの対応を可能にする歯科のNST への参画は,有意義であることが示唆された.