日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
重症心身障害児者の誤嚥性肺炎発症リスク検出における酒石酸咳反射テストの有用性
浅野 一恵村上 哲一山倉 慎二
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 15 巻 2 号 p. 183-189

詳細
抄録

【目的】誤嚥性肺炎発症には,嚥下障害の要素のみならず,気道防御反応の破綻も大きく関与している.臨床的に誤嚥症状を認める重症心身障害児者(以下重症児者)に対し,誤嚥と気道防御反応の両面から,誤嚥性肺炎発症リスクを検討した.

【対象】臨床的に誤嚥症状を認める重症児者(3 歳~44 歳)32 名に,嚥下造影と酒石酸咳反射テストを施行した.症状により,対象を許容群と非許容群の2 群に分類し,嚥下造影(以下VF)所見と酒石酸咳反射テストの結果を両群間で比較検討した.

許容群: 食事中のむせ,嗄声,喘鳴,痰など誤嚥を疑わせる症状を認めるが,誤嚥に関連すると考えられる発熱を認めず,誤嚥が許容範囲内であると考えられる群非許容群: 食事中の誤嚥症状があり,かつ誤嚥に関連する発熱を半年に3 回以上認め治療を必要とし,誤嚥が許容範囲を超えていると考えられる群

【結果】VF 検査上誤嚥を認めたのは32 名中20 名で,全例silent aspiration であった.VF 上誤嚥を認めた20 名中,許容群は10 名,非許容群は10 名であった.VF 所見(誤嚥量,嚥下反射惹起遅延,咽頭残留,誤嚥時期,高粘調物の誤嚥)で両群間に有意差を認めなかった.咳反射テストで,反応なしは許容群0 名,非許容群5 名で有意差(χ2 検定p<0.01)を認めた.

【結論】酒石酸咳反射テストは,重症児者の誤嚥性肺炎のリスク検出に有意義な方法である.

著者関連情報
© 2011 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
前の記事 次の記事
feedback
Top