日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
訪問看護における摂食・嚥下障害看護を推進する要因と妨げる要因
深田 順子鎌倉 やよい北池 正石垣 和子
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2012 年 16 巻 3 号 p. 253-268

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抄録

【目的】訪問看護における摂食・嚥下障害看護を推進する要因と妨げる要因を明らかにするとともに,これらへの訪問看護経験期間の影響を明らかにすることを目的とした.

【方法】訪問看護師7 名に対して,訪問看護場面への参加観察と半構造化面接を実施した.その結果,推進する要因は25 カテゴリ,妨げる要因は37 カテゴリが抽出された.合計62 カテゴリについて,訪問看護師228 名に対して質問紙調査を実施した.

【結果】1.質問紙調査では,訪問看護師159 名から有効回答を得た.訪問看護経験期間は平均4.2 ± 2.9 年で,5 年未満の者が67.9% であった.2.推進する要因は,〈訪問看護師に責任感がある〉〈観察・連携などから情報収集ができる〉〈機能帰結がわかる〉〈介護負担を軽減する方法を判断できる〉〈リスク回避ができる〉〈知識の獲得の機会がある〉〈療養者・介護者の意思を確認できる〉〈医師・同僚看護師と連携できる〉〈言語聴覚士・理学療法士と連携できる〉〈介護力が高い〉,の10 項目であった.3.妨げる要因は,〈摂食・嚥下障害,基礎訓練の知識不足〉〈摂食・嚥下機能を短時間で判断できない〉〈機能帰結がわからない〉〈病態に応じた援助方法を判断できない〉〈リスクが怖い〉〈療養者の先行期に問題がある〉〈時間の制約や記録システムがない〉〈介護力が低い〉,の8 項目であった.4.訪問看護経験が5 年未満の者は,5 年以上の者と比較して〈摂食・嚥下障害,基礎訓練の知識不足〉が妨げの要因であり,〈言語聴覚士・理学療法士と連携できる〉ことが,推進の要因であった.

【考察】摂食・嚥下障害看護の質向上をはかるには,臨床判断を促進させ,多職種との連携をはかる記録のシステムや,マニュアル作成の必要性が示唆された.

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© 2012 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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