抄録
福岡県篠栗地域及び山口県宇部地域には、三郡帯中に蛇紋岩体が分布する。これらの岩体は蛇紋岩を主とし超苦鉄質岩や変斑レイ岩質岩石を伴う。本研究では、これらの蛇紋岩体の成因に関する基礎資料を得る目的で、岩体中に含まれるクロム鉄鉱について産状及び化学組成を検討した.ここではその概要を報告する。
篠栗岩体 福岡県粕屋郡篠栗町陣ヶ田尾から飯塚市龍王山にかけて分布する.走向NEを示す結晶片岩類にほぼ調和的に存在する岩体で、1 km × 6 kmの範囲に厚さ数百mで分布する(浦田、1961).不透明鉱物としては、酸化鉱物としてmagnetite、hematite、ilmenite、chromite、また硫化鉱物としてpyrite、pyrrhotite、chalcopyrite、violarite、pentlanditeなどが認められた。クロム鉄鉱は、(1)蛇紋岩中に1∼2cmの厚さで微小にに集合した層状のものと(2)径100μm程度の不規則他形粒状で蛇紋岩中に鉱染状に産するものがある。EPMAによる分析の結果、(1)はMg#(=100×Mg/(Mg+Fe) )= 67∼73、Cr#(=100×Cr/(Cr+Al))= 80∼87を示す。(2)はMg# = 4∼10、 Cr# = 90∼100を示した.
宇部岩体 山口県宇部市内の海岸に露出する小岩体で蛇紋岩からなる.構成鉱物については渋谷(1991)の詳しい記載がある.不透明鉱物としては、magnetite、hematite、chromite等の酸化鉱物の他にpyrite、pyrrhotite、pentlandite、millerite等が認められた。クロム鉄鉱はほとんどのものが自形∼半自形を示し、径50∼100μm程度である。分析の結果、このクロム鉄鉱はMg# =32∼50、Cr# =71∼91を示した。
結果と考察
今回検討したクロム鉄鉱は、篠栗と宇部岩体の2つの岩体で組成領域が異なり、また同一岩体中でもクロム鉄鉱の産状により大きく異なることが明らかになった.一方、松本ほか(2002)は三郡帯の多里-三坂カンラン岩体(若松鉱山)中のクロム鉄鉱の化学組成を報告しているが、その結果と今回の結果は調和的ではない.Steel et al. (1977) はAlpine-type(ポディフォーム型クロミタイト)のクロム鉄鉱とStratiform-type(層状型クロミタイト)のクロム鉄鉱の化学組成の違いについて論じているが、それによると、篠栗及び宇部蛇紋岩体のクロム鉄鉱は後者の値の範囲に近い。