日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
症例報告
離乳期からかかわったダウン症2 症例の口腔運動・粗大運動・自食の意欲の発達経過
中嶋 理香藤田 ひとみ朝日 利江
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2012 年 16 巻 3 号 p. 290-298

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抄録

離乳からかかわったダウン症2 症例に対して,摂食機能の発達経過を粗大運動と自食の意欲の発達ともに考察した.摂食機能は,咀嚼・食べ方チェックリストと摂食嚥下機能評価で評価した.粗大運動は定頸・寝返り・座位・独歩した時期をカルテから抽出した.自食の意欲は,指導時にまったく自食しようとしない段階,自分で3 回以上持続して自食する段階,その間の段階の3 段階に分けた.

【症例1】生後5 カ月に離乳を始め,生後10 カ月より指導を始めた女児.定頸は7 カ月.座位の安定した1 歳3 カ月から舌を左右に振りながらボーロ菓子をとかす,過剰に顎を前進させて食べる,食材の柔らかさにより丸飲みや吸い食べが出現した後,舌の左右運動・咀嚼運動は1 歳9 カ月であった.1 歳7 カ月より,手づかみ食べが可能となった.2 歳10 カ月で一人歩きした.捕食時に口唇閉鎖は可能だが,開口咀嚼・舌挺出嚥下は持続している.

【症例2】生後6 カ月に離乳と指導を開始した女児.定頸は7 カ月であった.座位が安定する1 歳頃から食べ物を吹く,スプーンを噛む,食材の柔らかさによって丸飲みや吸い食べとなる時期を経て,1 歳6 カ月頃に舌の左右運動が出現し,同時に手づかみ食べも可能となった.一人歩きは2 歳4 カ月に可能となった.口唇閉鎖は捕食時に可能であるが,開口咀嚼・舌挺出嚥下は持続している. 2 症例に共通するのは,座位から独歩までの移行期に異常な口腔運動が出現したことと,処理時の口唇閉鎖機能を獲得できず,開口咀嚼と舌挺出嚥下を行うことである.口唇閉鎖機能は未熟でも咀嚼運動は2歳前半に出現すること,自食の意欲は1 歳6 カ月以降に出現することも共通した.独歩までは舌挺出嚥下やその他の異常な口腔運動が出現しやすく,間接訓練を積極的に導入することや,食材の種類・加工法を含めた指導を行う必要があった.

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© 2012 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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