【目的】唾液タンパクである分泌型免疫グロブリンA(sIgA),ラクトフェリン(LF),上皮成長促進因子(EGF)の濃度と年齢,肺炎球菌保菌,肺炎球菌ワクチン接種との関連を検討した.
【対象・方法】健常成人(30~50代)および地域高齢者を対象とした.舌・頬粘膜湿潤度を測定後,非刺激性唾液を採取し,sIgA,LF, EGFの濃度をELISA法によって測定した.また,肺炎球菌DNA量を,定量リアルタイム法によって測定した.対象者を,年齢要因(成人群・前期高齢群・後期高齢群),肺炎球菌ワクチン要因(未接種群・接種群),肺炎球菌要因(非保菌群・保菌群)に分類し,唾液タンパクとの関係を統計的に比較した.
【結果】成人群は63 名(平均46.0±7.5 歳),前期高齢群は130 名(平均69.9±2.4 歳),後期高齢群は141 名(平均80.0±4.2 歳)であった.肺炎球菌保菌者は,成人群35 名(55.6%),前期高齢群61 名(46.9%),後期高齢群46 名(32.6%)であった.sIgA・LF 濃度は,後期高齢群が成人群および前期高齢群より有意に高く,EGF 濃度は,前期・後期高齢群が成人群より有意に高値であった.また,sIgA 濃度は,肺炎球菌ワクチン接種による有意な差を認めなかった.肺炎球菌保菌要因の比較では,非保菌者が保菌者よりLF・EGF 濃度が有意に高かった(p<0.05,p<0.01).
【結論】肺炎球菌保菌割合は,成人群が最も高かった.sIgA・LF・EGF 濃度は,加齢による上昇が認められた.肺炎球菌の非保菌群は,LF・EGF濃度が保菌群より高かった.肺炎球菌ワクチン接種によるsIgA や肺炎球菌保菌への影響はないことが示唆された.