日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
症例報告
がん終末期患者の口腔ケアに対してケアリングを評価に用いる試み
佐藤 理恵
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2015 年 19 巻 1 号 p. 75-81

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抄録

口腔ケアの提供の場は,在宅から病院,急性期から終末期と多様で,症例ごとにその適応や方法が異なる.口腔ケアの評価方法としては,衛生状態,嚥下の機能,栄養状態,誤嚥性肺炎の予防効果,生命予後の改善など多岐にわたる.一方,口腔は会話や摂食といった人の尊厳に関わる機能と直結する器官であり,そのケアは全人的である.しばしばケアを提供する側の成長も図られていくことを経験する.従来の評価だけでは,口腔ケアの多面性を評価できていない懸念があった.

今回,2 例の終末期のがん患者の口腔ケアにおいて,看護記録や闘病日誌を参考にして質的研究を行いケアリング形成を客観的に評価することを試みた.その結果,患者─家族─医療者にケアリングの深化が示唆された事例を経験した.がん終末期の患者の口腔ケアでは,ケアの提供者と受給者の双方に積極的な影響が及びやすい傾向があるかもしれない.口腔ケアをケア提供者と受給者の関係性の視点でとらえる試みは,これからの課題でもある.口腔ケアとケアリングの関連を明らかにするためには,臨床で使用できる簡便なスコアリングが期待される

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© 2015 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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